東京大学アイソトープ総合センター 特任研究員の裏出良博氏
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 2019年10月11日に行われた「日経xTECH EXPO 2019」の特別講演「睡眠のセンシング技術:家庭用デバイスへの応用」には、東京大学アイソトープ総合センター 特任研究員の裏出良博氏が登壇した。

 近年は、寝返りなどの振動やいびきなどの音声で睡眠の深さやサイクルを測る睡眠アプリ、専用機器の普及が進んでいる。今後は脳波も含めて計測できる家庭用デバイスや睡眠改善策を提案するサービスなどの登場も予想される。そこで裏出氏は、そのような製品の開発に役立つ事例を紹介した。

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 従来は睡眠中は何もしていないから無駄な時間であり、短い方が活動的だと思われていたが、「脳科学の研究で睡眠中しか起こらないことがあることが分かった」と裏出氏は語る。

睡眠中に活発な脳機能
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 「1つは記憶の消去と定着だ。ほとんどの人は3〜4日前の昼ご飯を覚えていないが、調べてみると睡眠中に消えている。ずっと覚えていたら新しい情報を入れられないから、蓄積した情報から大事なものを残してそうじゃないものを消す。睡眠は情報の整理や記憶の定着に大変重要な役割を果たしている」。

 2つめは成長ホルモンの分泌だ。

 「寝入ってから最初の90分くらいの間に、1日に分泌される量の7割くらいの成長ホルモンが脳から分泌される。成長ホルモンの分泌があると筋肉量が増えて脂肪が減り、皮膚のコラーゲン量が増えるなどの効果がある」。

 3つめとして、老廃物の排泄効果もあるという。

 「数年ほど前に分かったが、睡眠時は脳細胞が少し縮んでおり、脳脊髄液の循環が良くなっている。βアミロイドという老廃物は認知症の原因物質とされているが、定期的に睡眠を取っていれば定着せずに排出される。起き続けていると滞留する時間が増えるため、認知症リスクを上げてしまう」。

 睡眠不足が続くと判断力の低下による作業ミス、認知機能の低下による物忘れ、ストレスの蓄積によるうつ病の発症など、さまざまな弊害があると裏出氏は語る。

睡眠不足によるさまざまな弊害
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 「睡眠が足りないことによる経済損失は日本で約15兆円と試算されており、GDP(国内総生産)に占める割合は約3%弱だ。日本は世界で一番ロスしている国の一つとなっている。うまく睡眠を取るだけでGDPを3%アップできるため、日本は世界各国の中で睡眠ビジネスが成長する可能性がある」。

OECD諸国の睡眠時間の中で、2018年に日本はワースト1位となった
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