2019年10月10日、日経xTECH EXPO 2019(東京ビッグサイト)会場でパネルディスカッション「デジタルものづくり【スーパーユーザーパネル】~ものづくりデジタル化の現状と今後~」が開催された。製造業におけるデジタル革新やスマート工場化の先進ユーザーであるマツダ、独シーメンス、米ロックウェル・オートメーションのの各担当者がパネリストとして登壇。ものづくりデジタル化の実際を、それぞれ自社の経験を踏まえて話し合った。

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 パネル前半はそれぞれがプレゼンに立ち、自社のものづくりデジタル化の取り組みを紹介した。後半は3つのテーマに基づき、ものづくりデジタル化の推進に関してパネリスト3人が意見を交わした。

デジタルものづくり【スーパーユーザーパネル】のパネリスト
手前から米ロックウェル・オートメーションのジョセフ・バルトロメオ氏、独シーメンスのサッシャ・メヌル氏、マツダの木谷昭博氏、奥はモデレーターの日経ものづくり編集長 山田剛良氏(撮影:新関雅士)
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「どうやって製造業のデジタル化を推進するか」

 パネルディスカッションではまず、「どうやって推進するか」をテーマに議論が交わされた。

マツダ 執行役員 MDI&IT本部 本部長の木谷昭博氏
(撮影:新関雅士)
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 1996年に「MDI(Mazda Digital Innovation)1」をスタートして今日に続くデジタル化にかじを切ったマツダだが、当時は経営危機のまっただ中。大規模な予算を必要とするデジタル化プロジェクトをどう推進したのか。木谷氏は「クルマの商品力を高めるためにどうしても必要だと財務と経営陣を何度も説得した」と明かす。

 MDI 1が指向したシミュレーションをフル活用する開発ではソフトウエアはもちろん、高速な計算を実施するスーパーコンピュータへの投資が不可欠だった。「クルマの商品力をライバルに比べてどうやって高めるか」という自動車会社の永遠の課題を、「シミュレーションとデジタル化が解決する」と解く正攻法のアプローチを取ったわけだ。「最終的に会社が理解して集中投資してくれた。デジタル化の推進では経営者をいかに説得するか、そのストーリーが重要」(木谷氏)

独シーメンス ファクトリーオートメーション 海外営業担当シニアディレクターのサッシャ・メヌル氏
(撮影:新関雅士)
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 開発リーダーなど現場の中核となる人物を巻き込み、「ど真ん中で開発している設計者や研究者などを動かすのがもう1つのポイント」と木谷氏は話す。実は2010年の「SKYACTIV TECHNOLOGY」発表直前も、2008年のリーマン・ショックなどの影響でデジタル投資が思うように進まない状況だった。この状況を覆したのは当時、マツダ社内で次世代エンジン開発をけん引していた人見光夫氏(現・常務執行役員・シニア技術開発フェロー)らの声だったという。

 「当時我々が掲げていた『内燃機関での復活』の実現には、スーパーコンピューターによる燃焼シミュレーションが生命線だった。人見のようなスーパーエンジニアが『モデルベースだ』『シミュレーション』だと言うと説得力が違う」(木谷氏)

「スモールスタート」で成果を出して展開

ロックウェル・オートメーション エンタープライズアカウント&ソフトウエアセールス担当副社長のジョセフ・バルトロメオ氏
(撮影:新関雅士)
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 ロックウェル・オートメーションのバルトロメオ氏は、小さく始めて明確な成果を出し、その後に大きく展開するスモールスタートが有効だと話す。

 「旋盤機を使ったある工程に計画外停止が多かったので、その改善をパイロットプロジェクトにした。当初は予算がなかったので成果1週間以内、予算なしという条件で取り組んだところ、IoTチームがこの課題を解決した」という。