前田建設工業の髙橋哲郎ICI総合センター AI・IoT研究センター長 兼 情報システム総合センター 情報戦略・システム企画グループ長は2019年10月11日、東京ビッグサイトで開催した展示会「日経 xTECH EXPO 2019」で「デジタル変革に対応するIT部門へ、前田建設がクラウド上に作ったすごい統合基盤」と題して講演した。アジャイル開発の取り組みや自社の開発・実行環境などについて説明した。

前田建設工業の髙橋哲郎ICI総合センター AI・IoT研究センター長 兼 情報システム総合センター 情報戦略・システム企画グループ長
(撮影:菊池 一郎)

 前田建設工業がアジャイル開発に取り組み始めたのは2000年頃から。他の建設会社向けの外販を手掛ける内製開発チームが、生産性向上のために導入したのがきっかけだ。同社がアジャイル開発を適用して構築したシステムは大小含めて約30個ある。動作環境はクラウドだ。クラウド上には大きく「本番環境」「本番相当のテスト環境」「開発環境」の3つの環境を用意する。

 前田建設工業のアジャイル開発では、1週間ごとにユーザーにとって価値のある機能をリリースする。開発する機能を示したユーザーストーリーは、プロジェクト管理ツールの「Redmine」で管理。開発したソースコードはリポジトリの「Git」に蓄積している。ソースコードはCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツールの「Jenkins」などを使って自動でテスト。本番環境へのデプロイは自動デプロイツールの「Capistrano」などを利用する。

 「アジャイル開発は、最初は内製開発チームだけの取り組みだったが、今ではそのチームが培ったクラウドやOSS(オープンソースソフト)のノウハウを社内の業務システム開発にも生かしている」(髙橋センター長)。例えば複数の業務システムで共通して使われる「ログイン」「マスター管理」「セキュリティー」といった機能をマイクロサービス化。複数のシステムからマイクロサービスのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を呼び出す形で利用できるようにした。この他、クラウドDBの「Amazon Aurora」などを使い、社内の複数システムのデータを一元的に蓄積するためのビッグデータ基盤を構築した。

 髙橋センター長が次の課題と考えているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の機運を社内全体に広める活動だ。DXの必要性を訴えかけるための漫画を作成して事業部門に配布したり、手軽に人工知能(AI)の機能を試せる環境を用意して新しい業務アイデアを生み出しやすくしたりしている。髙橋センター長は「やっとDXの第1歩を踏み出したところ。デジタルビジネスの創出に勝ちパターンはない。トライアンドエラーを繰り返して成功確率を高めていきたい」と語り、講演を締めくくった。