AI(人工知能)を活用した設計システムの取り組みで、意匠と構造のそれぞれの分野において最前線に立つ設計者2人のパネルディスカッションが実現した。

 「日経 xTECH EXPO 2019」では2日目となる2019年10月10日に、「AIを建築設計に生かせ!『意匠』『構造』それぞれの最前線──山梨知彦×九嶋壮一郎」と題した特別公演を開催。日建設計設計部門プリンシパルの山梨知彦常務執行役員と竹中工務店設計本部構造設計システムグループの九嶋壮一郎副部長が、建築設計でのAI活用の可能性を語った。モデレーターは日経 xTECH/日経アーキテクチュア編集長の宮沢洋が務めた。

 登壇者の1人、日建設計の山梨常務はコンピュテーショナルデザインの第一人者。2019年には「桐朋学園大学調布キャンパス1号館」(東京都調布市、2014年竣工)で2度目の日本建築学会賞作品部門を受賞した。講演ではまず山梨常務が受賞作品を例に、次のようにAI活用の可能性を紹介した。

日建設計設計部門プリンシパルの山梨知彦常務執行役員(写真:菊池 一郎)
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 音楽大学の設計では従来、遮音を重視して分厚いコンクリート壁で仕切るため、「牢屋(ろうや)のような雰囲気になりがち」(山梨常務)だった。 そこで、桐朋学園大学では教員と学生からの要望を最大限に取り入れ、様々な寸法や形のレッスン室を相互の関係性を考慮しながら配置。各レッスン室の間に空間を挟み込むことで、自然光と通風を取り込めるようにし、「牢屋」からの脱却を図った。

 設計時、この配置を決めるのに活用したのがBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)。コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデルを構築して最適解を探った。そうした人間のアイディアをAIによって検証させれば、より複雑な空間の設計が可能になるはずだという。

 続いて登壇した竹中工務店の九嶋副部長は、「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区、2014年竣工)などの構造設計を手掛けるなかで、構造領域へのAI(人工知能)導入に取り組んでいる。構造設計へのAI活用については「試行錯誤のスピードと精度を飛躍的に向上させた」と語った。

竹中工務店設計本部構造設計システムグループの九嶋壮一郎副部長(写真:菊池 一郎)
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