様々な種類のロボットが人とともに活躍するビルの現場、何十台もの重機が自律運転して巨大な構造物を生み出すダムの現場――。建築・土木業界でロボット技術の導入や重機の自動化が加速している。2019年10月9日に開幕した「日経 xTECH EXPO 2019」では、その最先端をいく大手建設会社2社による特別講演が対談形式で行われた。

 特別講演「建築・土木の工事現場は工場に変わる! 2020年代の近未来像」に登壇したのは、鹿島の高田悦久専務執行役員と清水建設の印藤正裕常務執行役員。それぞれ異なるシステムやアプローチによって、ロボット技術や重機の自動化に取り組んでいる。両社における取り組みの現状と背景を紹介するとともに、技術のポイントを解説。さらに今後の課題にまで話が及んだ。モデレーターは日経 xTECH建設編集長/日経コンストラクション編集長の浅野祐一が務めた。

 最初に話題提供したのは鹿島の高田専務だ。まず建築・土木業界が抱える慢性的な人手不足の状況について触れた。1997年には685万人だった施工従業者が2017年には498万人にまで減少。高田専務はこの現状に加え、建設業の生産性が「この20年ほとんど変わっていない」と指摘した。

鹿島の高田悦久専務執行役員(写真:新関 雅士)
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 そうした人手不足や低い生産性、さらに労働災害のリスクといった課題の解消を目指し、鹿島では、AI(人工知能)や蓄積データによって最適化した施工計画通りに建設機械を自律稼働させる次世代建設生産システム「クワッドアクセル(A4CSEL)」を開発。ポイントとなるのは、AIを利用した機械の自動運転技術だ。「管制室で運転を集中管理し、複数の機械を効率的に配置、稼働させることにより、最大の施工効率を実現する」と高田専務。2020年に成瀬ダム工事で同システムを全面導入する予定だ。

 一方、清水建設では、次世代建設生産システム「シミズ・スマート・サイト」を既に現場へ本格導入。建物の3次元モデルであるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とAIを搭載した自律型ロボットとを連携させ、ロボットを現場で人と一緒に作業させる。「目的は労働環境の改善であり建設労働者の処遇改善。そのためにも、新たな生産システムを創出して品質・安全の向上を図りながら2023年までに生産性20%向上を目指す」と印藤常務は力を込めた。

清水建設の印藤正裕常務執行役員(写真:新関 雅士)
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 このシステムの開発で重視したのは、「Easy(操作、使用が簡単)」「Safety(安全、分かりやすいこと)」「Beautiful(格好いい、一緒に仕事したいこと)」「Comfortable(賢い、助かる)」という4点。「現場では労力を費やすことのたとえに、“荷揚げ半分、取り付け半分”という言葉がある。例えば、ビル建設で資材の荷揚げだけでも自律型ロボットをうまく導入できれば、生産性は大きく向上する。ロボットが人間の仕事を奪うのではなく、協調して働けるように分業する」と印藤常務は説明した。

 両社が取り組むような先端的な技術を現場で運用するに当たって、鹿島の高田専務は協力会社との連携の重要性を挙げた。「協力会社と一緒に取り組むことでさらなる改善点も見いだせる。材料やITなど幅広い分野で人材を募って、より良いものにしたい。昔は現場で必要な要素として“経験、勘、度胸”などと言ったが、これからは“経験、勘、データ”の時代だ」(高田専務)

 この発言を受けて、清水建設の印藤常務も、「1社だけのノウハウでは足りない。競争ではなく“共創”。オープンイノベーションとして捉え、様々な業務を標準化、共通化していくことだ」と応じた。新しい技術を確立させていくための人材や制度、仕組みの必要性を強調した。