ベネッセコーポレーションの植田省司デジタル開発部シニアアーキテクトは2019年10月9日、東京ビッグサイトで開催中の「日経 xTECH EXPO 2019」で、「ベネッセが挑んだクラウド移行」と題して講演した。植田シニアアーキテクトは「クラウド移行に大切なのは事前準備」と強調する。

ベネッセコーポレーションの植田省司デジタル開発部シニアアーキテクト
(撮影:菊池 一郎)
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 植田シニアアーキテクトが取り組んだのは、進研ゼミ専用タブレット向け学習教材などで使うサーバーのクラウド移行だ。従来Webサーバーやデータベースサーバーなど計35台ほどのサーバーをオンプレミス(自社所有)環境で運用していた。データ量は4テラバイトに及ぶ。

 植田シニアアーキテクトが課題に感じていたのは運用コストだった。「毎年、億単位の運用費がかかる。これを削減できないかと考えた。システムのEOL(End Of Life)をなくしたいという思いもあった」(植田シニアアーキテクト)。そこでベネッセは米マイクロソフト(Microsoft)のクラウドサービスであるAzureにサーバーを移行することにした。それに合わせてデータベースを米オラクルのOracle DatabaseからAzure SQL Databaseに置き換える。

 植田シニアアーキテクトはAzureを採用した理由を「エンタープライズシステムへの理解が1番深かったのがマイクロソフトだった」と説明する。営業やサポートの体制を考えてAzureを選択したわけだ。

 移行先は決まったものの、移行計画の立案は簡単ではなかった。移行データは4テラバイトと膨大。しかもサービスをほとんど止めずに移行しなければならない。そこで植田シニアアーキテクトは「3人のチームで事前に検討を進め、マイクロソフトの協力を得て、実際に負荷テストなどの実験を繰り返しながら正しく移行できるかどうかを確認した」と話す。

ベネッセのデータ移行方法
(撮影:菊池 一郎)
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 移行時には念入りにWBS(Work Breakdown Structure)を作成し、3カ月をかけて段階的に移行していった。若干のトラブルが発生したが工夫で乗り切った。クラウド移行プロジェクトは無事に完了。植田シニアアーキテクトは「現在のところ障害の問い合わせはゼロ」と胸を張る。オンプレミス環境に比べて運用費が7分の1になったという。

 植田シニアアーキテクトはプロジェクトを振り返り、「データ特性に着目して移行計画を立てるのが大切だ」と話す。更新が無いデータなのか、更新が頻繁に発生するデータなのかといったことを考慮し、移行の順番を決めることが重要だという。