「金属アディティブ・マニュファクチャリング(AM)の実運用を推進するコンソーシアムにドイツに所在する企業70社以上が参加している」――。ドイツ・フラウンホーファー(Fraunhofer)研究機構 材料・ビーム技術研究所(IWS)付加製造部門 部長のエレナ・ロペス(Elena Lopez)氏は2019年5月29日、日経BP社が開催した「テクノロジーNEXT 2019」の製造×デジタルセッション「3兆円市場が見えてきた『金属3Dプリンター』産業利用最前線」に登壇した。同氏はフラウンホーファー研究機構が手掛けている大型コンソーシアム「Agent-3D」の責任者を務めており、コンソーシアムで進む実用研究プロジェクトにおける要素技術、関連技術の開発について解説した。

(写真:新関雅士)
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 フラウンホーファー研究機構は、政府と民間が資金を出し合って産業応用のための技術研究を推進する組織で、複数の研究所を擁する。ロペス氏が所属するIWSはもともとレーザー溶接のための材料研究から発展して、金属AMのさまざまな研究を手掛けるようになったという。

企業70社が参加し2021年までに成果

 Agent-3Dは、9000万ユーロ(約110億円)の資金を投じた活動で、2012年に方針策定を開始し、2019年第1四半期現在で10件程度の研究プロジェクトが進行中。さらに10本弱の研究プロジェクトが始まり、2021年までに所定の成果を得る予定になっている。Agent-3Dには、既に70社が参加しているのに加え、関心を持っている企業も合わせると120社に及ぶという。当初は航空宇宙関連の企業が多かったが、最近は自動車やエネルギー、車両、医療、生産技術などさまざまな分野の企業が参加しているという。

 プロジェクトのテーマは、大型部品の造形や、マルチマテリアルでの造形、鋳造品などの既存工法とAMの組み合わせ、AMによる部品への新機能の造り込みなど。例えば大型部品については、カナダ・ボンバルディア社(のドイツ法人)が参加し、鉄道車両の構体の造形などを目指す。トポロジー最適化技術を適用して、既存工法では造れないような複雑な形状になってもAMでの造形により、車両の運行に必要なエネルギーの節約を見込める。レーザー光源の出力を強化し、1時間に9㎏の材料を造形できる高速なLMD(レーザー・メタル・デポジション)方式の造形装置を開発している。さらにレーザー出力を高めれば、造形スピードはさらに上げられるという。

 マルチマテリアルでの造形では、造形品の中で局所的に部材を変えて、これまで複数の部品に分けて得ていた機能を一体造形品で実現できるようになる。その手段として、LMD方式で材料の粉末を吐出する前に、複数の粉末材料を混ぜ合わせる工程を設ける装置で研究を進めている。造形を続けながら材料の組成比を徐々に変化させ、組成が連続的に変化(傾斜)する造形品を得られるようになった。ここで、例えばタービンブレードのうち耐熱性が必要な羽根部分のみ耐熱合金で造形する場合、母材との熱膨張係数との差によりひびが入らないように、材料をどのように変化させればよいか、などを明らかにする。

 既存工法とのAMの組み合わせも有力な研究テーマ。モーターを取り付ける部材について、アルミニウム合金のダイキャスト品に追加して、さらにAMでアルミ合金を造形する方法を実証している。共通部分をダイキャスト、製品ごとに差が生じる部分をAMで造ることにより、ダイキャスト型を増やさずにバリエーションを得られる。「ダイキャストの上にAMでアルミ合金を盛るのは、実は簡単ではなかった。ダイキャスト品に存在する空隙や不純物のためで、うまく造形するためにパラメーターを調整した」。予想に反して、AMでの造形部はダイキャストより、むしろ空隙や不純物が少ないと分かったという。

(写真:新関雅士)
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