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 米国で毎年3月ごろ、4大スポーツをはじめスポーツビジネス界のキーパーソンが一堂に会する世界最大のイベントが開催されている。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院が主催する「MIT Sloan Sports Analytics Conference(SSAC)」である。今年も世界から約3500人が集まった。

 今年のMIT SSAC2019に参加した、日本スポーツアナリスト協会 産業連携デイレクター 石井宏司氏が、日経BPが主催したイベント「Sports Tech&Biz」(2019年3月20日開催)で、そのポイントを講演で紹介した。今回はその後編を紹介する。

“最終的な来場者が分からない”チケッティングの課題

 米国で最も人気があるプロアメリカンフットボールNFLは、2017年シーズンに、それまで分断していたチケットの一次流通、二次流通、入場・着券のすべてを統合したプラットフォームの提供を開始した。それはチケッティングのオープンプラットフォーム化を意味し、チケットを個人間で取引できるようになった。

 しかし、このプラットフォーム上でどんどんリセールが進むため、最終的に誰が来場しているのかが分からなくなる問題が浮上しているという。これに対し、MIT SSAC 2019に登壇したメジャーリーグ(MLB)のオークランド・アスレチックスのセッションでは、新たに導入されたチケッティングモデルが紹介された。

講演する日本スポーツアナリスト協会 産業連携デイレクター 石井宏司氏
(写真:浅野智恵美)
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 「最終的な来場者が分からないと何が問題になるのか。実は、スポーツではファンのセグメントによってニーズが異なるため、これに応えられなくなってしまうのです。例えば『Traditional Fans』はシートオーナーシップ、ここは自分の席だということを主張したがります。自分の席が固定されているので近くには仲間がいて、そのコミュニティーも大切です。いかにホームプレートに近い席かも重視します。一方、『Younger Fans』はその逆で、自由さを大事にしていて、新しい経験も求めています。ソーシャルエクスペリエンスを強調し、シーンを大事にしています」(同)

Traditional FansとYounger Fansではニーズが異なる
(図:オークランド・アスレチックス)
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 「あるリサーチ会社が調査した、ミレニアル(millennials、1980年前後から2005年頃にかけて生まれた世代)と呼ばれる若い世代の人々が“何を大事に考えているか”というアンケートでは、Wi-Fiネットワークという回答が最も多く40%でした。彼らは動画やSNSを使うので、高速回線がないとイライラしてしまいます。2番目はソーシャル/パーティーエリアが重要という回答で29%。従来のスタジアム・アリーナの場合は決まった席に何時間もいなければならず、彼らにとってはこれが非常につらいのです」(同)

 「アスレチックスは『A’s ACCESS』という、従来のシート型とは異なる新しいチケットモデルを作りました。これは、決まった座席はないけれど全てのゲームで球場には入れるという、アクセス型のチケットモデルです。球場内に“ソーシャルスペース”と呼ばれる場所があり、空いていれば自由に座れる簡易的な椅子があります」(同)

 「さらに、アスレチックスは新しいチケッティングシステムに合わせたスタジアムを作ろうとしています。球場の一番上は庭のようになっていて、ここをいつでも使えるようにするといったものです。アクセス型のチケットは早くも効果が出始めていて、これまで買い控えていたおそらく若い層や女性などを取り込めるようになり、利益も出ています」(同))

アスレチックスが紹介した新スタジアムのイメージ図
(図:オークランド・アスレチックス)
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