2019年6月18日から2日間、ICTによるデジタル変革をテーマにした大型イベント「九州デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP)が福岡市・博多区の福岡国際会議場で開催された。初日18日午前11時からのKEYNOTE(基調講演)では、双日 ビジネスイノベーション推進室 デジタルイノベーションチーム アシスタント マネジャーの村上 雅明 氏が「マグロ養殖事業におけるIoT・AI活用事例―日本の水産業活性化に向けた取組概要―」と題して講演した。

双日 ビジネスイノベーション推進室 デジタルイノベーションチーム アシスタント マネジャーの村上 雅明氏(撮影:中馬 修)
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 村上氏は講演の冒頭、高齢化や後継者不足、収入源など、様々な課題に直面する日本の漁業の現状を説明。続けて、2008年から長崎県松浦市でマグロ養殖事業を営む100%子会社の双日ツナファーム鷹島におけるIoT(インターネット・オブ・シングズ)やAI(人工知能)の活用事例について紹介した。「給餌の最適化と尾数の自動カウントというマグロ養殖事業の2つの課題をIoTとAIで解決できないか試みた」と村上氏は語る。

 給餌の最適化に関しては、いけすに海水温度や溶存酸素量、塩分濃度を測定するセンサーを設置。いけすごとに給餌量を変えて、センサーで収集したビッグデータとマグロの成長性との関連を分析。トライアンドエラーを繰り返して、最適な給餌量を見極めようと試みた。その結果、いけす内の尾数や水温の最適値が見えてきた。「マグロ養殖のコストの60%は餌代。これを減らせれば収益性が大きく向上する」(村上氏)という。今後はAIも活用して、給餌最適化に向けた取り組みを続ける。

 尾数のカウントに関しては、いけす間でマグロを移動させる際に水中カメラでマグロを撮影し、AIを使って画像を解析することで実現できないかを試した。「従来は動画を見ながら手動でカウントしていたため、数え間違いなどが避けられなかった」(村上氏)。ただ、カウントの精度は現状では「70~80%程度で完全自動化には至っていない」と村上氏は説明する。このため、現在では画像の鮮明化など、改良に取り組んでいるという。

 双日ツナファーム鷹島における取り組みを通じて、IoT・AI活用での課題が見えてきた。なかでも村上氏が挙げるのは「事業・現場業務 とITをつなぐ人材の不足」だ。今回はシステム部門出身の村上氏が自ら水産業を学ぶことで、“通訳”を務めたが、今後の展開を考えると人材の確保が急がれるという。IoT・AI案件の創出に関しては、事前の費用対効果の見極めが難しいことも課題として挙げる。村上氏は「とにかく投資と考えるしかない」と説く。