「従来の効率化一辺倒ではだめ。日本のモビリティーが目指すべきは、効率化によって生み出された原資を再投資して社会を活性化するという姿だ」――。ローランド・ベルガー(本社東京)代表取締役社長の長島 聡氏は、2019年5月23日、「名古屋デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP)に登壇し、「自動車産業のデジタル化」と題した基調講演で、デジタル技術によって変革期を迎えている自動車産業の現状と展望について語った。

基調講演に登壇したローランド・ベルガー代表取締役社長の長島 聡氏
(撮影:筒井誠己)
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 長島氏は、キーコンポーネントの供給から、クルマの企画・開発・生産、移動サービス、配車マッチング、バリューチェーン・サービス、新たなモビリティー社会の構想(ビジネスデベロッパー)など、少なくとも10の領域で「CASE」(接続性、自動運転、シェアリング、電動化)を活用したさまざまな事業が世界中で生まれていると指摘。各事業で台頭しているプレーヤーの活動を紹介した。

 例えば、「キーコンポーネントの供給」領域では、単眼カメラを使った自動運転支援のイスラエル・モービルアイ(Mobileye)が、「アルゴリズムに優れ、大手メーカーと台頭に渡り合える技術を持っている」(長島氏)。同社は、メガサプライヤーを巻き込んで走行データを積み上げ、その大量のデータを活用してアルゴリズムのさらなる改良を図るというサイクルを回している。それにより、単眼カメラ運転支援システムで強い地位を築き上げたと見る。

モービルアイの取り組み
(出所:ローランド・ベルガー)
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 「クルマの企画・開発・生産」領域では、ドイツ・ダイムラー(Daimler)の取り組みを紹介した。同社は、早くにモデルベース開発(MBD)を取り入れるとともに、CADやシミュレーション・ツールなどソフトウエアを全社で共通化して車両開発を効率化。さらに、開発初期から運用シーンを想定しながらアーキテクチャーを決めているという。「クルマをどう使うかを考えた上で、その運用に耐えられるかどうかをシミュレーション・ツールで検証している」(長島氏)という。

 ダイムラーはクルマを供給するだけでなく、「移動サービスの提供」「配車マッチング」「インフラ」といった領域でも新たなモビリティー事業を展開。それらを次の収益の柱にしようとしている。「人とモノの移動をセットで考えてさまざまな取り組みを始めている」(長島氏)。同社が競合と見ているのは、もはや自動車メーカーではなく、米テスラ(Tesla)や米アップル(Apple)、アマゾン(Amazon.com)であり、包括的なサービス事業提供により「次のモビリティー産業の覇権を狙っている」(同氏)と分析している。