名古屋市で開催中のデジタル変革をテーマにした大型イベント「名古屋デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP)。2日目の2019年5月23日には、南山大学 理工学部 ソフトウェア工学科 教授の青山 幹雄氏が「DXで『2025年の崖』を越えてデジタル競争の勝者へ」と題して講演した。青山氏は経済産業省が2018年9月に発表したレポート「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を取りまとめた研究会の座長を務めた。

南山大学 理工学部 ソフトウェア工学科 教授の青山 幹雄氏(撮影:筒井誠己)
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 講演の冒頭、青山氏は「ITシステムが事業革新の足かせになっている」と指摘。既存システムの保守コストがIT投資の大半を占める現状を「技術負債」と喝破し、Web、IoT、モバイル、AIなどのデジタル技術を企業活動の中核に据えた企業変革、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を訴えた。

 「DXによる変革は製造業に大きなチャンスをもたらす」と青山氏は続ける。「鍵を握るのはコネクティビティ。コネクティビティがもたらすデータのリアルタイムな収集と活用で、顧客に新たな価値を提供し、企業業績の向上につなげてほしい」と語った。

 青山氏は自動車配車サービスのUberを例に、「DXでは従来の当たり前が当たり前でなくなる」とし、「ITによって社会課題を解決し、データを活用する新しいビジネスモデルを確立すべき」と主張する。「DXをいかに取り込むかが今後の事業の発展につながる」と続ける。

 その後、青山氏は射出成形機メーカーのオーストリアENGEL AUSTRIA社や自動車部品メーカーの旭鉄工におけるDXの成功例を紹介。特にPCボード「Raspberry Pi」を使って小コストでライン監視システムを構築した旭鉄工の事例では、「DXは投資がかさむと思いがちだが、数十万円からスモールスタートすることもできる」と力説した。

 これらの成功例を通じて、青山氏はDXのサクセスパターンが見えてきたという。すなわち「経営者、業務部門、IT部門の三位一体で推進することだ」。特に経営者には「チャレンジすることが大事。けが以外は失敗してもよい」との心がけが大事と説く。さらにIT技術者に求められる人材像、スキルセットの見直しが必要とも主張する。

 最後に青山氏は日産自動車の事例を引きながら「ITと事業は一体。事業に必要なITは何かを仕分けする必要がある」と語り、「日本企業は2025年の崖を乗り越えて、デジタル競争優位を確立してほしい」と満員の来場者に訴えた。