「作業員の高齢化、担い手不足、技術伝承の難しさ――。こうした課題を抱える建設現場では今後、自動化や機械化が不可欠になる」。大成建設土木本部の今石尚技師長は2月20日、東京都内で開かれた「東京デジタルイノベーション2019」で、同社の建設現場における自律型・遠隔操作型の建設機械やロボットの導入状況について講演した。

大成建設土木本部技師長の今石尚氏
(撮影:新関 雅士)
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 今石技師長は土木技術者として国内外のトンネル工事を中心に手掛けた後、2010年から大成建設技術センターで建設機械の自動化や各種建設ロボットの開発に携わってきた。

 同社がこれまでに企画、開発して「T-iROBO」と名付けた建設ロボットシリーズは約10種類に上る。「人が入れない場所や、負担の大きな作業が求められる現場などに、T-iROBOの導入を進めている」と今石技師長は語る。人が立ち入れない場所での活用例として、水中の掘削作業を遠隔操作で行う「T-iROBO UW(シャフト式水中掘削機、UWはUnder Waterの略)」を紹介した。

熟練技能者の技術をデジタル化

 さらに、ヘッドマウントディスプレーを装着してカメラ映像を見ながら遠隔操縦する「T-iROBO Remote Viewer(臨場型遠隔映像システム)」も解説した。無人建機の運転席に取り付けた左右の魚眼カメラの球面映像から平面映像を切り出し、操縦者のヘッドマウントディスプレーにステレオ表示する。操縦者が見たい方向に頭を向けると、その方向の映像が映し出される仕組みだ。「この技術を使って、国土交通省が昨秋に九州で実施した無人化施工訓練に参加したり、土木研究所との共同研究を進めたりしている」と今石技師長は話す。

 作業員の負担を軽減するロボットとしては、「T-iROBO Cleaner(自律型清掃ロボット)」や「T-iROBO Roller(自動制御型振動ローラー)」、「T-iROBO Rebar(鉄筋結束ロボット)」を紹介した。自律型清掃ロボットは、夜間などの無人の現場でラバーコーンとバーで囲ったエリア内を自動で動き回って掃除する。自動制御型振動ローラーは、作業内容を指示すると建機が暗闇の中でも、盛り立てた土砂などの転圧作業を無人で実施する。「T-iROBO Slab Finisher(コンクリート床仕上げロボット)」も自律化に向けた開発を進めている。

 高度な技術が求められる作業にも、ロボットの活躍が期待されている。その1つが、作業員の技量によって品質が左右される建設現場での溶接作業だ。「T-iROBO Welding(現場溶接ロボット)」は、熟練技能者の技術をデジタル化。「自動化が遅れていた現場溶接の様々な課題を解決できる」と今石技師長は言う。

今石技師長が説明した「T-iROBO Welding」。角形鋼管柱などを溶接するロボットだ。柱の周囲にある仮固定治具などの障害物を自動で回避しながら作業できる(撮影:新関 雅士)
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 「T-iROBOを運用していくうえでの課題は通信だ。現在、遠隔操縦などで必要となる大容量の映像データを送信できる方法は限られている。しかし今後、5Gと呼ばれる次世代通信方式が実用化すれば、解決できるはずだ」と、今石技師長は期待を込めた。