全体最適に向けてまず工場全体の流れを見える化

スマートファクトリーの鍵となるオークマの知能化技術
(撮影:新関 雅士)
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 オークマが生産する工作機械のほとんどは顧客専用の加工プログラムに対応できる仕様を組み込んでおり、機種は派生種を含めて約300機種、それに必要な部品の種類は16万種類ある。一木氏は「工作機械の製造は多品種少量生産の典型。マスカスタマイゼーションの実現で第4次産業革命の扉を開こうとしている」と話す。

 こうした新世代工場のコンセプトを具現化する第1弾として2013年5月に竣工したのが「DS(ドリームサイト)1」工場。DS1では最終製品である工作機械を造る組み立て工場と、それに必要部品を最適なタイミングで加工して供給する部品加工工場を直結した形でレイアウトされており、一貫生産体制となっている。

 2017年3月には最新鋭の「DS2部品工場」をDS1の隣に竣工した。DS2部品工場に続く土地には今後、「DS2組み立て工場」を建設する予定だ。

 DS1工場に話を戻そう。DS1工場で扱う部品の種類は約1000点、32種類の工作機械を造る。省エネの取り組みも含めて24時間・7日間移動する工場を作ろうと取り組んだ。

 縦軸に設計情報から加工、組み立てに至るECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)、横軸にはSCM(サプライチェーンマネジメント)とDCM(デマンドチェーンマネジメント)にしたスマートファクトリー概念図を作った。その縦と横を組み合わせることで改善サイクルを回し、知識の高度化を目指すコンセプトだ。

 まず縦軸を詳しく紹介する。工作機械による部品加工は加工プログラムが担う。加工プログラムは設計図面の情報を元に、どうやったら設計図通りの部品を造れるか置き換えたものだ。これを使って実際に部品加工する前に従来は「試し加工」を実施していた。素材を工作機械にセットして想定通り加工できるか試すのである。3D-CADの設計図面から加工プログラムを自動生成するだけでは、工具が干渉して加工できなかったり、思ったように精度が出なかったりする。予定通りの時間で加工が終わらないこともある。こうした問題を修正するためのプロセスだ。

 DS1ではこの試し加工プロセスを大幅に減らした。オークマのFA(ファクトリーオートメーション)製品の1つである「3Dバーチャモニター」を使って徹底的にシミュレーションし、試し加工をせずに加工してしまおうという取り組みをしているという。

 3Dバーチャモニターには加工機と同じ3Dモデルを持っており、機械と同じサーボデータの設定で動かせるので非常に正確にシミュレーションできる。加工時間の予測も非常に正確だ。まさにサイバーフィジカルシステムをここでも実現できているという。

 「単に加工シミュレーションするだけでなく、知能化技術のアンチクラッシュシステム、さらにはサーモフレンドリーコンセプトによって高精度な加工ができるからこそ実現できる」と一木氏は胸を張る。「まさにスマートマシンをベースにしたものだ」(一木氏)。

 「これまでの『カイゼン』は部分最適になりやすい側面があった」と一木氏は振り返る。部分最適が行きすぎるとライン全体、工場全体、そこで作り出される製品を最適化する全体最適にはなかなかたどり着けない。そこでDS1工場では見える化システムを導入。加工機すべてのシステムをリアルタイムで一覧、一望できる配置にした。班長や係長が持っているタブレットだけでなく、現場の人もあちこちに配置されたモニターを見ると、「すべての機械の状況を見られるようになり、意識レベルの向上にもつながった」(一木氏)という。

稼働監視で得た停止データを徹底的に解析して稼働率をさらに高めた
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 稼働モニターは稼働状況だけでなく、IoTでの情報収集機能を使って電力モニターや出来高、稼働の履歴などを収集できる。さらにその場で加工している部品の図面、治具を含む3Dモデル、先ほど紹介したシミュレーション結果なども見られるようになっている。