2019年2月19日から都内で開催された「東京デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP社)。2日目のキーノートにオークマ 製造本部 生産技術部 部長の一木洋介氏が登壇し、「ロボット&IoTで改善加速する次世代スマートファクトリー~部品4000種類の多品種少量生産を実現するオークマDS2部品工場~」と題する講演を行った。

オークマ 製造本部 生産技術部 部長の一木洋介氏
(撮影:新関 雅士)
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 100億円を投じた新工場「DS2(ドリームサイト2)部品工場」に投入したデジタル技術とその成果を解説した。DS2は2017年竣工の同社最新鋭の工場で、デジタルツインによる加工シミュレーション、RFIDタグを利用した部品1個レベルのトレーサビリティー、IoT(Internet of Things)による工作機械の稼働監視、ロボットを駆使した自動化など最新技術を投入し、4000を超える部品を自動で造り分け、週末72時間の完全自動運転などを実現している。

“ポスト成熟社会”に向けてスマートファクトリー化が重要

オークマは創業1898年、「ないものは創る」がモットーの工作機械専業メーカー
(撮影:新関 雅士)
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 オークマは1898年に創業した工作機械の専業メーカーで、工作機械のメカだけでなく制御装置も自社で造っている。こうした技術力を生かして最新製品では工作機械の加工室内に多関節ロボットを組み込んだ、新しいコンセプトの加工機も提案している。熱変位を補正する「サーモフレンドリーコンセプト」、びびり(工具と被削物の間で継続的に発生する振動)を抑制し、最適な加工条件を探索する知能化技術など、世の中にない技術を自社開発し、「ないものは創る」をモットーにしている。

 工作機械はあらゆるものづくりの下支えする生産財で、2017年には切削型工作機械の生産高は全世界約6兆円に達した。中長期的に成長する産業とみている。国内の労働人口の割合が高く、飛躍的な成長が期待できる時期はドイツが1990年、英国は1980年に終わり、日本は1995年に終わった。2010年時点では労働人口の中央年齢が45歳と高く、2030年には52歳になると予測されている。成熟社会からポスト成熟社会に移行すると見こまれている状況を鑑みると、少子高齢化、労働力の不足、人件費の高騰から労働生産性を向上していくことが鍵になる。これが新工場計画の基礎コンセプトの1つになっている。

世界で次期産業革命を目指す動き
(撮影:新関 雅士)
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 世界の潮流も意識した。世界のものづくりでは新たな価値の創造を目指す動きが活発化している。ドイツでは「インダストリー4.0」、米国では「インダストリアルインターネット」という考え方が提唱されている。中国でも「中国製造2025」によってものづくりの最強国を目指すという動きが出ている。

 インダストリー4.0に代表される次世代のものづくりのプラットフォーム作りの動きが活発化しているが、「上空層だけでなく、工場単位の低空層、加工機や周辺機器などの地上層もスマート化するというのを同時にやらなければならない」とオークマでは考えたと一木氏は説明する。

 オークマではスマートファクトリーの中核要素を、スマートマシンの本来の性能を引き出す「知能化技術」と見ているという。熟練の技術者のノウハウや経験などの暗黙知を機械が自律的に実行するというものだ。

 オークマにおける知能化技術の代表的な事例としては、機械の熱変位量を予測して自律的に加工位置を補正して加工精度を確保する「サーモフレンドリーコンセプト」、加工時に「びびり」という有害な振動が発生したときに工作機械内部で周波数を解析し、機械が最適な主軸の回転数を選んでオペレーターにナビする「加工ナビ」などがある。また、3次元モデルを工作機械の制御装置内部に持ってぶつからないようにする「アンチクラッシュシステム」などもそうだ。