海運業を営む日本郵船は、船舶のエンジンデータなどを収集し、故障の予知に役立てている。2019年2月20日、ITイベント「東京デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP社)のキーノートセッションに同社 海務グループ ビッグデータ活用チーム チーム長の山田省吾氏が登壇し、同社が取り組むビッグデータ活用の詳細を説明した。

日本郵船 海務グループ ビッグデータ活用チーム チーム長の山田省吾氏
(撮影:新関 雅士)
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 2017年度にトラブルで船舶が停止した時間は、同社が保有する830隻の船舶の合計で、1万8236時間に達する。停止時間を減らすためには、部品の故障といった事故を防ぐことが重要になる。しかし、従来は、事故を予防するのに必要なデータを取得できておらず、トラブルの兆候を捉えるといった運用ができていなかった。メンテナンスは、運転時間や作動回数ベースで実施していた。

 これを改め、船舶で発生するエンジン監視データなどのビッグデータを解析して活用できるようにした。取得データは500~2000点ある。これらを船舶に積んだコンピュータ「SIMS」で収集し、衛星経由で陸上に送っている。現在、830隻中の183隻にコンピュータを搭載済みで、順次増やしている。

 陸上では、すべての船舶から挙がってくるデータを統合的に監視するためのアプリケーション「LiVE for Shipmanager」を使う。船舶ごとに、排気温度や吸気温度、エンジン負荷などのグラフを閲覧できる。同一スペックの姉妹船同士のデータを比較する機能などもある。

 山田氏は、データを活用してトラブルを未然に防いだ事例を1つ紹介した。あるタンカーがペルシャ湾に原油を積みに行った帰りに、第3シリンダーの排ガス温度が上昇している異常を発見した。インド洋でエンジンを止めて点検したところ、排気弁の一部からガスが漏れていた。予備の弁に交換し、6時間の停泊時間で済んだ。もし修理せずにそのまま運航していたら、これよりも大きなトラブルにつながっていたかもしれなかった。

 ただし、現在はまだ、人間が監視データのグラフの形を見て、手動でトラブルの予兆を発見している。今後は、予兆の検知も自動化する予定という。