2019年2月19日、日経BP主催のイベント「東京デジタルイノベーション 2019」が開催された。ジェーシービー(JCB)のイノベーション統括部主任である笛田翔氏が同社のAI(人工知能)活用について講演した。

ジェーシービーのイノベーション統括部主任である笛田翔氏
(撮影:新関 雅士)
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 笛田氏の所属するイノベーション統括部は、全社的な研究開発の拠点となる部署。新しい仕組みや事業を提案するのが使命となる。そこで、革新のための手段としてAIを利用しているという形だ。まだ構想段階の案件も多いが、これまで行ってきた、AIにまつわる検討や実証実験を紹介した。

 AIの活用先としては、OCR(光学的文字認識)処理と画像解析、分析予測、言語解析の4項目を挙げた。OCRによる文字認識は、文書の内容により高い精度で読み取れるケースもあったという。ただ、実用化するには間違って判断するケースをどの程度許容するかという課題があった。笛田氏は「OCRにかけた後に人手で修正しなければいけないのであれば、正解率よりむしろ確認と修正の容易さが重要になる」と語った。用途を検討した結果、クレジットカードのポイント交換で使う用紙の入力補助として実用化した。

 画像解析の例では、JCBの高田馬場事務所の売店に導入した「AI無人レジ」を紹介した。レジに商品を置くと、AIが商品を認識して合計の価格を表示する。バーコードやタグが不要になるため、営業中の店員の手間を大幅に減らせる。また、店員がいなくても精算できるため、1人で営業している時間は一時的に閉めていた店を開けたままにできるというメリットもあった。一方、事前に商品をAIに学習させる必要があるため、準備には従来よりも手間がかかってしまうのが課題だ。

 うまくいかなかった例としては、OCRを使った請求書精算がある。試験的に導入するに当たって業務フローを見直さなかったため、スキャンするための準備のプロセスが増えただけで、手間が減らなかったという。他にも新しい仕組みは既存のやり方を変える試みのため、「これまでのノウハウをどう継承するのか、新しいノウハウを習得するためのリソースはどうするのか、といった現場からの反発も出てしまった」(笛田氏)。

 こうした様々な取り組みを通じて、やってみないと分からないことや想定していなかったメリットなど、多くのことに気付いたという。最後に笛田氏は現時点の結論として「実験は物理的に、導入は数学的に」という言葉を紹介した。

 実験は夢と期待を持って行い、それを現場に導入する際はきちんと計算、証明してからにするという数学的なアプローチが必要だろう、と解説して講演を終えた。