2019年2月19日から東京都内で開催されている「東京デジタルイノベーション 2019」(主催:日経BP社)のパネルディスカッション「IoT・AIで日本全国活性化!進む地方創生プロジェクト」において、高知県と福岡県の担当者らがIoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用した地方の課題解決への取り組みを披露した。

パネルディスカッションに登壇する(左から)片岡氏、揚田氏、吉本氏、見雪氏、小橋氏
(撮影:新関 雅士)
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 高知県は「IoT推進ラボ研究会」を立ち上げ、県内のユーザー企業やITベンダーなど合わせて150社ほどが参画。県の主要産業である農林水産業を中心に県内各地を回って課題をヒアリングし、研究会に参加するITベンダーなどから課題を解決するためのIoT活用のソリューションを募っている。「当初は現場の方に課題を聞かせてほしいとお願いしても『忙しい』と迷惑がられることもあった」(高知県商工労働部産業創造課IoT推進室の揚田徹チーフ)が、取り組みを始めてからの2年半で51件ヒアリングを実施し、ITベンダーなどがIoTによる課題解決への取り組みを始めた例が27件、IoTソリューションの完成にこぎ着けた例も5件ある。

 パネルディスカッションではその一例として、170M~202.5MHzのVHF帯の無線を使い、山林の地籍調査を遠隔で実施する取り組みを紹介した。高齢の地権者は山林へ行くのが難しいケースもあり、伐採前の地籍調査が遅れたり森林組合の事務負担が増えたりしていた。「VHF帯無線は回り込みやすく、3Mbps程度のビットレートで鮮明な映像を伝送でき、地権者からも『自分が現地にいるかのようだ』と言ってもらえた」(STNetの吉本浩二経営企画室副室長兼研究開発部長)。

 福岡県も県庁の各部局や教育委員会、警察本部などから成るIoTの推進会議を設け、IoTの導入意向を持つ企業や団体に県内のITベンダーが出向き課題やニーズを聞く「現場ニーズ把握会」を開催。イチゴの熟練農家の育て方をデータ化して継承する取り組みや飲酒運転防止システム、ため池の水位管理システムなどに取り組んでいる。「福岡県の強みであるハードウエア・ソフトウエア技術で中小企業を支援し、福岡発で製品やサービスを開発していきたい」(福岡県新産業振興課の見雪和之企画監)。

 福岡県からの支援を受けIoTを推進する福岡県内の企業の例として、IoT機器などを開発するベンチャーのBraveridgeも登壇した。同社はLoRa、Sigfox、LTE-MといったLPWA(ローパワー・ワイドエリア)とBluetoothに対応したブリッジと、Bluetoothに対応した各種のIoTセンサーを開発している。IoTセンサーからBluetooth経由でブリッジに接続し、そこからLPWA回線を介してインターネットに接続する製品構成だ。Bluetoothセンサーやブリッジは設計の工夫により、「Bluetooth 5.0を使い陸上で1キロメートル、海上で2.5キロメートル離れても通信できた」(Braveridgeの小橋泰成技術担当取締役CTO)とする。

 高知県や福岡県のような取り組みは全国各地の自治体に広がっている。産官学連携で2015年10月に設立した「IoT推進コンソーシアム」がモデル事業を推進する分科会「IoT推進ラボ」を立ち上げており、IoTで地域の課題解決に取り組みたい自治体を支援している。「2016年に地方版IoT推進ラボを始めてから、これまでに93の地域を支援している」(情報処理推進機構の片岡晃社会基盤センター長)といい、今後もIoTによる課題解決を進めていく意向だ。