今年の「ISSCC 2019(International Solid-State Circuits Conference 2019)」(2月17日~21日に米国サンフランシスコで開催)では、電源回路技術に関する投稿件数/採択件数は他回路分野よりも多く、注目度が高かかった。採択論文の中で特に目を引いたのが、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が発表した「5G向けの新たなパワートラッキング技術」(講演番号 15.2)と、米University of California, San Diego(UCSD)が発表した「導通損失を抑えた新方式の降圧型DC-DCコンバーター技術」(講演番号 8.2)である。

 最初に、Samsungの技術を紹介する。スマートフォンなどの無線通信機器は電波を送信するパワーアンプを内蔵しているが、その消費電力が機器全体の消費電力のかなりの割合を占める。このため、機器の電池寿命を延ばそうと、送信電力に応じてパワーアンプの電源電圧を動的に変動させる、パワートラッキング技術の開発に力が注がれてきた。これまで、パワートラッキング技術は主に2種類あった。すなわち、送信信号の包絡線を瞬時に追随するエンベロープトラッキング(Envelope Tracking:ET)方式と、送信のサブフレームごとにゆっくり追随するアベレージ・パワート・ラッキング(Average Power Tracking:APT)方式である。一般に、高い送信電力時は前者のET方式を、低い送信電力時には後者のAPT方式を、というように2つの方式を切り替えて利用してきた。

 移動通信技術が高度化するにつれて、パワートラッキングの帯域幅が広がっている。現在の4G/LTEでは80MHzまで、次世代規格の5Gでは400MHzまで要求される。帯域幅を広げるには、ET方式ならば制御回路の速度を5倍以上引き上げる必要があり、結果として消費電力が激増する。これでは、機器の消費電力を抑える効果が薄まってしまう。一方、APT方式だと、低い送信電力時しか電力低減の効果が得られない。

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