ディスプレー分野で世界最大の学会「SID 2018」(5月20日~25日、米国ロサンゼルス)のシンポジウムで、筆者が興味を持ったシンポジウムの講演を報告するシリーズ。第4回は、8Kの色規格への対応を目指す青色有機EL材料について、半導体エネルギー研究所(SEL)の開発成果を紹介する。同社は“Highly Efficient Deep-Blue Fluorescent Dopant for Achieving Low-Power OLED Display Satisfying BT.2020 Chromaticity”と題して発表した(論文番号13.3)。

BT.2020対応の鍵を握る青色有機EL

 有機ELの青色素子の効率および色域の改善は重要な課題である。近年、BT.2020の色域が8Kディスプレーの標準として提案されている。この色域をカバーするためには、従来の材料と比較して、より短い波長の、より深い青色の発光材料が必要である(図1)。

図1 BT.2020とは
(出所:半導体エネルギー研究所)
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 SELは今回、ピレン骨格とは異なるヘテロ芳香族環骨格を持つ新規ドーパントを開発した。従来のピレン系深青色ドーパント「BD-02」に比べて、新開発のドーパントはより深い青色を生成し、効率も高い。さらに、マイクロキャビティー構造を組み込むことにより、BT.2020対応を可能にする青色を達成した。新規ドーパントを用いたディスプレーの消費電力は、従来のドーパントを用いたディスプレーに比べて低い。

新開発の深青色ドーパント

 図2は、青色ドーパントである「BD-02」「BD-05」「BD-06」のトルエン溶液中のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを比較したものである。このうちピレン系のBD-02は、450nmにピークを持ち、これを用いたマイクロキャビティー構造を持つ有機EL素子がBT.2020対応の青色発光を満たすことを示している。マイクロキャビティー構造は、特定の波長の光の強度を増加させ、電極間の光学共鳴効果によって光を抽出する技術である。

 しかし、この有機ELの外部量子効率(EQE:External Quantum Efficiency)は、TTA(Triplet-Triplet Annihilation)メカニズムがEQEの増加に寄与すると仮定しても、十分に高いとはいえない。

図2 新開発の深青色ドーパントの特性
(出所:半導体エネルギー研究所)
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 そこでSELは、ピレン骨格とは異なるヘテロ芳香族環骨格を持つドーパントBD-05およびBD-06を開発した。これら2つのドーパントは同じ骨格発光体を持つが、PLスペクトルには幾つかの違いがある。ヘテロ芳香族骨格に結合した置換基の変化は、PLスペクトルのシフトに有効である。BD-05およびBD-02のPLスペクトルは、同様の位置(それぞれ448nmおよび450nm)にピークを持つが、BD-06のスペクトルのピークはより短い波長(441nm)に位置する。また、BD-05とBD-06のショルダーピークはBD-02のショルダーピークよりも弱く、新規ドーパントの主ピークはBD-02よりもシャープになっている。

 これらのスペクトル特性は、マイクロキャビティー構造を持つ有機EL素子の場合、新開発の材料が深青色発光を得るために有効であることを示している。図2の表に、トルエン溶液中のドーパントのPL量子収率(PLQY:PL Quantum Yield)を示す。BD-02のPLQYは91%である。これに対してBD-05とBD-06のPLQYはそれぞれ93%と97%であり、BD-02のPLQYよりも高い。これは、BD-05およびBD-06が、より短いピーク波長でシャープなスペクトルであることに加えて、高いPLQYを持つ優れた青色ドーパントであることを示している。

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