本記事は、日経 xTECHの「デジタル化の勘所つかめず苦戦、AIに強い商社マンが打破」(2019年3月1日掲載)を再編集したものです。

 三井物産は自社が関わる全てのビジネスで、デジタルトランスフォーメーションを推進しようとしている。特に力を入れているのが人工知能(AI)の活用だ。AIによる医療診断や物流ルートの最適化、チケット価格の適正化、食料品の需要予測などである。

 デジタル技術に強い企業との業務提携や、技術ベンチャーへの投資も積極的だ。著名なAI技術者アンドリュー・ヌグ氏が設立したファンドや、国内の有力AIベンチャーPreferred Networksなどに出資している。

 これらのデジタル案件は経営企画部内に設置した「Digital Transformation(DT)チーム」が担当する。デジタル化が本格的に軌道に乗り始めたのは2018年から。それ以前は「どうすればうまく進められるのか分からず、もがいている状況だった。ブレークスルーできた要因としては、DTチームの中にAI集団をつくったことが大きい」と、経営企画部の三浦正彦部長補佐は明かす。

三井物産経営企画部の三浦正彦部長補佐
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 DTチームができたのは2017年5月だが、その半年前の2016年末から経営企画部が中心となってデジタル化の取り組みを始めていた。このとき問題になったのがPoC(Proof of Concept、概念実証)である。

 PoCは「ビジネスとテクノロジーを掛け合わせることで、既存ビジネスをどう改善するか」「どんな新規事業を創出できるか」といった仮説を立てるところから始まる。この仮説立案の勘所がつかめず、とにかく苦労した。うまく仮説を立てられなければ、PoCを繰り返しても実ビジネスにはつながりにくい。

 デジタル化の仮説立案は、事業内容とテクノロジーの両方に詳しい人材でないとかなり難しい。「今後、全ての産業に大きな影響を与えるAIやロボットに土地勘がある人材がDTチームには必要だと気付いた」(三浦部長補佐)。

 仮説とは「自社が実現したいこと」である。外部の企業につくってもらうものではない。そこでDTチームに適正な人材を社内から集めることにした。

AIを使いこなせる「テック系商社マン」が社内にいた

 まずターゲットにしたのは、社内の事業部門に所属している入社10年以内の社員のうち、学生時代にAI関連の研究していた人たちだ。DTチームの松本悠揮マネージャーもその1人である。ICT事業本部や素材関連の本部で働いていたが、DTチームに呼ばれて異動した。

 学生時代は、AI研究で有名な東京大学大学院の松尾豊特任准教授の研究室に在籍していた。そういう人材を探せば社内で見つけられるのだから、大手商社は非常に恵まれた環境にある。ただし、誰かが言い出さないと異動にはならない。

 松本マネージャーと同じく、金下裕平デジタルアーキテクトもエネルギー関連の本部からDTチームに異動してきた。やはり大阪大学大学院でAIを学んでおり、2016年に三井物産に入社したばかりだった。

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