本記事は、日経 xTECHの「プロジェクトを中止に追い込むデータ不足、人海戦術で打開」(2019年2月27日掲載)を再編集したものです。

 PoC(Proof of Concept、概念実証)は進むが、実際のビジネスでの成果に結び付けることができない――。デジタル変革をPoCで終わらせないための勘所を先進企業に学ぼう。

 全社を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる企業の代表格といえば、SOMPOホールディングスが挙げられる。新規事業の創出や既存事業の大幅な効率化のため、デジタル技術を積極的に活用している。

 直近では、介護分野で活用する最新テクノロジーの検証施設「Future Care Lab in Japan」を開設する他、糖尿病などの生活習慣病リスクを予測する人工知能(AI)を東芝などと共同開発している。メッセージアプリのLINEを使って保険に加入できるようにしたり、自動車事故を起こしたときにLINEから報告できたりするサービスも開始した。

介護分野で活用する最新テクノロジーの検証施設「Future Care Lab in Japan」の開所式
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 様々なDXプロジェクトを推進しているのは、専門組織であるデジタル戦略部。同部が設置された2016年以降、意欲的に新サービスの創出や企業提携、PoC(Proof of Concept、概念実証)に取り組んでいる。

 デジタル戦略部が扱う案件は、年間で約40。そのうち実現するものは約10件。途中で打ち切りになるものが約15件だという。残りの約15件は、翌年以降に持ち越される。

 DXの先進企業と評判が高いSOMPOホールディングスでも、実サービスにまでこぎ着けられる企画は年間案件全体の4分の1に当たる、10件程度だ。実現する企画よりも、PoC止まりで終わってしまう方が多いのが実情というわけだ。

 PoCから先に進まない案件は、当初見積もった費用対効果を実際には実現できないか、サービスの品質が一定レベルに達しないかのどちらかだという。特に「データが不足していて、サービス品質を高められなかったケースが多い」と、SOMPOホールディングスの中林紀彦チーフ・データサイエンティストは打ち明ける。

 例えば、2018年にPoCで打ち止めになった案件の一つに、クルマのドライバーの眠気を事前に察知するアルゴリズムの開発プロジェクトがある。ドライバーを撮影したカメラ画像や自動車の加速度、ブレーキのタイミングといったデータから、眠気がくる5分前に予兆を検知するアルゴリズムを構築しようとした。

 しかし、予兆検知の精度を約7割までしか高められなかった。7割の判別精度では、予兆検知サービスとして許容できないとSOMPOは判断した。「ドライバーの脳波などのデータが加われば、もっと精度を上げられたかもしれない。だが現状で手に入るデータでは、精度に限界があった」と中林チーフ・データサイエンティストは振り返る。結局このプロジェクトは、約半年ほどで打ち切りになった。

最後の決め手は人海戦術でのデータ収集

 データ不足が原因でサービスの開発を中止した案件が数多くある中、事前にデータ不足が分かっていたにもかかわらず、実サービスにまで結び付けられた案件も存在する。自動車保険の代理店業務を効率化する「カシャらく見積り」というサービスだ。

 カシャらく見積りは他社の自動車保険を契約している人に、SOMPOグループの自動車保険を提案して乗り換えを促すものだ。カシャらく見積りのアプリを搭載したタブレットのカメラで他社の保険証券を撮影し、その内容をAIが分析する。SOMPOグループの保険商品であれば、同等の補償内容でいくらになるのか、数十秒で見積もりを提示できるという。

代理店向けサービス「カシャらく見積り」の概要
(SOMPOホールディングスの資料を基に日経 xTECHが作成)
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