クラウドの先に見据えるのはAIの活用だ。ITサービスの領域にとどまらず、AIで医療や農薬など社会の課題解決を目指す。8000人のAI人材が次々と生み出すアイデアを事業化につなげる枠組みが始動した。

 「人体の内部を3次元CGで再現するAI」「医療機関専用チャットボット」「アフリカやインド向けの農業支援サービス」――。数年後のマイクロソフトの事業は、今とは全く異なった姿になっているかもしれない。医療や農業など、これまで縁のなかった分野の製品を開発する「社内スタートアップ」が次々と生まれているからだ。

 新製品のアイデアを量産するエンジンが、8000人を超えるAI人材を擁する「AI&リサーチグループ」だ。企業のAI専門組織としては世界最大規模である。2016年9月に設立した同グループは、企業内研究所の「マイクロソフトリサーチ(MSR)」に所属するAI研究者と、音声認識技術「コルタナ」やAzureなどの製品部門に所属していたAIエンジニアを集約。AIで社会の課題を解決する「AI for Good」と呼ぶ新しいアイデアの開発を進めている。

図 マイクロソフトのAI研究活動「AI for Good」の概要
AIで社会問題の解決を目指す(写真提供:マイクロソフト)
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「肝臓用」「脾臓用」APIも

 新しいアイデアの事業化も始めた。例えば2017年2月に設立した「ヘルスケアNExT(New Experiences and Technologies)」は、AIを活用した医療ソリューションの事業化を進める。

 2017年11月にプレビュー版の提供を始めた「InnerEye」は、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)で撮影した人体の断面画像から患者の体内の3次元(3D)CGを作り、肝臓や脾臓、大動脈などの体内器官や腫瘍の形状と位置を特定する。

 「これまでは放射線科医が何十、何百枚ものMRIやCTの画像を目で見て、頭の中で器官や腫瘍の立体的な形状を想像していた。InnerEyeによって1~2時間かかっていた診断時間を1~2分に短縮できる」(InnerEyeのシニア・プログラム・マネジャーであるイワン・タラポフ氏)。

 2次元のMRI/CT画像から3次元CGを作り出す技術は、ゲーム機「Xbox 360/One」の周辺機器「Kinect」の立体画像生成技術を応用した。器官や腫瘍の形状と位置を特定する3次元画像認識技術はディープラーニング(深層学習)で開発した。

 InnerEyeはクラウドのサービスとして実装し、「肝臓認識用」「脾臓認識用」など機能ごとにAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用意する。MRI/CTのメーカーが提供する既存の画像診断ソフトにInnerEyeの技術を組み込めるようにするのが狙いだ。

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