非破壊検査の技術開発が一段と加速したきっかけの1つが、2012年12月に起こった中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故だ。接着系あと施工アンカーが抜け落ち、吊り下げていた天井板が100m以上にわたって落下。9人の犠牲者を出した。接着系アンカーの長期引張荷重による限界耐力を把握するのは難しく、経年変化を考慮した設計法はいまだ確立していない。接着系アンカーはコンクリートに埋まっており、点検でも盲点になりやすかった。

 2012年12月2日午前8時すぎ、山梨県の甲州市と大月市にまたがる中央自動車道上り線の笹子トンネル(全長4784m)で、天井が崩落する事故が発生した。東京側の坑口から約1.7kmのトンネル内で100m以上にわたり、270枚のプレキャストコンクリート(PCa)製の天井板が落下した。

事故発生の翌日深夜に撮影された崩落現場。東京側に向けて撮影。奥に崩落を免れた天井板と隔壁の逆T字形の天井構造が見える。消防士が乗っているのが崩落した隔壁と思われる(写真:山梨県大月市消防本部)
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■ 事故現場の位置図
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 走行中の自動車が、1枚1t以上ある天井板の崩落に巻き込まれて、火災が発生。9人の犠牲者を出す惨事となった。

 笹子トンネルは1977年に供用を開始。崩落した天井部は、横流換気方式という構造で、換気ダクトの役割を果たすために設けていた。トンネル内を天井板で上下に仕切り、さらに上部空間を隔壁で左右に送気用と排気用に分けた構造だ。天井板や隔壁は、覆工コンクリートに定着させた接着系あと施工アンカーで吊り下げており、さらに天井板の端は、トンネル側壁の受け台でも支持していた。

 先の崩落後の写真から、天井板は側壁の受け台に架かったまま崩落したことが分かる。吊り下げ部材が何らかの要因で引張力を失い、崩落の引き金になったとみられる。

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