AI(人工知能)が今注目を浴びている理由の1つが、機械学習によって、実用的なモデルを以前よりもはるかに容易に構築できるようになったことだ。ここではモデルを作成するためのデータの準備や、モデルの精度の考え方などを、モデル作成のステップに沿って解説する。

 コンピュータの進化によって機械学習が可能になり、これまでは理論にとどまっていたアルゴリズムを適用できるようになりました。大量のデータをインプットすることで、データに潜むルールやパターンをコンピュータが自動的に学習し、モデルとしてアウトプットできるようになったことが今のAIブームの背景にあります(図1)。

図1 機械学習によるモデルの作成例
[画像のクリックで拡大表示]

 AIブームは1980年代にも起こりました。その際は、人間の過去の経験や知恵を体系化した「エキスパートシステム」が中心になっていました。しかしエキスパートシステムは、人間がロジックを定義していたため、膨大な手間がかかるうえ、人間の曖昧さをルール化できないといった問題がありました。

 本稿では、まさに現在のAIブームの主役ともいえる、機械学習を使ったモデルの構築について理解を深めていきます。機械学習によってモデルを構築するための手順を追いながら、そのポイントを説明します。

手間要らずになる機械学習モデルの構築

 機械学習を使って構築したモデル(以下、「機械学習モデル」)は既に様々な業務で活用されています。その1つが、人間が判断するための指標や材料の提示です。さらに最近では、人間の判断を代替し得るものとして、実際の業務での活用が進みつつあります。

 機械学習モデルを適用したAIの活用事例としてまず思い浮かぶのが、画像や音声の認識、文章の翻訳です。またEC(電子商取引)サイトといったオンラインサービスでのユーザーの嗜好に合わせた商品・コンテンツの提示や、ものづくりの現場における製品や装置の異常検出といった業務では、機械学習で作成したモデルが担当者に代わってタスクをこなすようになりました。特定のタスクに関するデータからモデルを構築し、それを導入することで、人間の担当者よりも高精度かつ高速に大量の判断・予測が自動で可能となりつつあるのです(図2)。

図2 AIによる意思決定の代替の例

 定型化しにくい業務においても、機械学習モデルは活用されています。例えば、小売業者の出店戦略の立案や、需要予測のような業務では既に機械学習モデルが使われています。これらの業務ではモデルがアウトプットしたデータを参考にしながら、データ化されていない人や社会の複雑な動きを考慮して、人間が最終的な判断を下します。モデルのアウトプットが、判断材料の1つとして活用されるのです(図3)。

図3 AIによる意思決定のサポートの例
[画像のクリックで拡大表示]

 ところで、機械学習モデルを構築する場合、イチから構築しなければならないのでしょうか。実はそうではありません(図4)。

図4 機械学習モデル構築アプローチ選択の違い
[画像のクリックで拡大表示]

 特定の用途で利用可能な機械学習モデルを提供する環境は、年を追うごとに充実してきました。「猫の画像を認識する」「SNSのコメントの感情を読み取る」といった限定的な目的であれば、構築済みの機械学習モデルがクラウド上でAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)経由で提供されています。Amazon Web Servicesや米グーグル(Google)、米マイクロソフト(Microsoft)をはじめ、様々な企業がAPIを提供しており、その数・種類はますます増えています。

 自社の製品やサービスに特化した固有のモデルが必要というケースでも、イチから構築する必要はありません。今は、最先端の研究成果を含め多種多様な機械学習向けのアルゴリズムが、ライブラリーやフレームワークとして次々と公開されているからです。そしてその多くがOSS(オープンソースソフトウエア)として公開されており、それを使った試行や活用がしやすくなっています。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら