IT関連トラブルを検証する日経コンピュータのコラム「動かないコンピュータ」から、裁判に発展した事例を再録しました。本記事は、日経コンピュータ2015年12月24日号の「動かないコンピュータ」です。

野菜宅配のらでぃっしゅぼーやが進めていた基幹システム再構築プロジェクトが失敗し、構築のやり直しを迫られていたことが明らかになった。らでぃっしゅぼーやは開発会社である大塚商会の不適切なプロジェクト管理を、大塚商会は要件確定の遅延や追加開発費の未払いを、失敗の原因として主張。両社は互いを提訴し、2015年12月時点でも係争は続いている。

 らでぃっしゅぼーやは全国2600の生産者・メーカーと直接契約し、有機・低農薬野菜などの宅配を手掛ける。創業は1988年で、2012年にNTTドコモの子会社となった。

 同社は創業以来使ってきた販売・物流・商品管理などを担う基幹システムの刷新を大塚商会に依頼して進めたが、中核となる販売管理システムの開発に失敗した。プロジェクトが失敗した責任を巡り、らでぃっしゅぼーやと、開発を担当した大塚商会の主張は食い違い、争いは法廷の場に持ち込まれた。

 大塚商会は2012年に、システム開発費約4億円のうち未払い分など約1億600万円を求めて、らでぃっしゅぼーやを提訴。らでぃっしゅぼーやは2013年、システム開発契約の債務不履行など約3億円を求めて大塚商会を反訴した。裁判所による調停は不調に終わり、裁判は継続中だ。

オフコン上の旧システムを再構築

 基幹システムの刷新に向け、らでぃっしゅぼーやが大塚商会とシステム開発の基本契約を締結したのは2008年6月のことだ。当時、米IBMのオフコン「AS/400」上で基幹システムを利用していた。2011年の本誌取材に対し、同社は基幹系刷新の理由を「長年の改修の結果、業務提携など新ビジネスの開始に業務系の改修が追い付かなくなった」と説明している。

 再構築の対象は販売管理を中核に、取引先管理、商品管理、人事管理、会計、物流を含むシステムである。販売管理システムに関して、大塚商会はパッケージソフト「SMILEie」を中核に、定額報酬でシステムを開発する債務を負う内容を提案した。らでぃっしゅぼーや側によれば、基本契約は3億2800万円(税抜き)の固定額で、追加開発分は予定していなかったという。

 だが、2009年10月に稼働させる予定だった販売管理システムが本稼働することはなかった。大塚商会は2009年11月19日、販売管理システムの開発を「無期限で停止する」旨を通告(らでぃっしゅぼーや側の主張)、販売管理システムの開発は中止となった。

 ただし、らでぃっしゅぼーやが大塚商会に依頼したシステムが全て動かなかったわけではない。販売管理システムと連携するEC(電子商取引)サイト「eらでぃっしゅ」関連システムは、2010年2月に稼働を始めた。

 販売管理システムに関して、その後らでぃっしゅぼーやは、自力で再構築する方針に変更したとみられる。2011年の本誌取材に対し、会計や人事管理はSMILEieで構築し、販売管理や物流などはSOA(サービス指向アーキテクチャー)基盤上に自社開発するとしていた。

開発費用で合意に至らず

 なぜシステム再構築は失敗したのか。両社が裁判に提出した資料を読むと、理由について主張は異なる。

 最初に提訴した大塚商会の資料にある、失敗の理由は以下のようになる。

 開発が進まなかった理由として同社が挙げるのは、販売管理システムの「業務要件の確定に時間がかかった」(大塚商会の訴状より)ことと、追加開発費用の 未払いだ。

 大塚商会の主張によれば、追加開発費用の未払いは複数のシステムにわたる。eらでぃっしゅ関連システムに掛かった約5500万円であり、販売管理システム本体向け追加機能の開発費用である。これらについて、両社で合意できなかったため、結果的にシステム開発を中断したとする。

 資料によれば、取引先・商品管理システムも同様のことが起きている。

 大塚商会は、システムの外部設計書を2008年10~12月にかけて納品し検収を受けた。その後、らでぃっしゅぼーやの担当者が管理項目の追加や取引先連絡機能の追加を要求。大塚商会はこれをサブシステムとして開発し、2010年11月に納品したものの、らでぃっしゅぼーやは追加費用の交渉を拒んだと大塚商会側は主張する。

 さらに同社は資料で、AS/400で稼働する旧システムから新システムへのデータ移行の追加費用約1400万円、物流システム関連のコンサルティング費用約600万円に関しても、合意に至らなかったとする。

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