VRやARといった技術は、日常に“便利”をもたらす技術として浸透していく。業務や生活を一変させる可能性を秘め、普及するにつれて経済効果は大きくなっていく。VR/ARの普及には、便利をもたらすコンテンツが欠かせない。加速を続けるデバイスの進化が後押ししつつ、コンテンツ拡充の時代が到来する。

 VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)といった技術は、業務や生活を一変させる可能性を秘める。「空間コンピューティング(Spatial Computing)」の実現が見込めるからだ。

 リアル空間とは全く異なる仮想空間を作り出して没入したり、リアル空間の任意の位置に必要に応じてデジタルコンテンツを呼び出したりできる。空間全体をディスプレーのように使えるため、作業領域の拡大や並行作業の容易化ができ、業務や生活に“便利”をもたらす技術として浸透していく。

 加えて、今いる場所と遠隔地を仮想空間でつなげることもできる。それぞれの利用者をアバターとして“召喚”することで、離れていても実在感の高い交流が可能になる。例えば、単身赴任先でも家族と一緒にいるかのように自宅で過ごせたり、まるで音楽ライブの会場にいるかのように自宅にいながら出演者を鑑賞したりできる。

 リアルタイムに鑑賞しなくても、アーカイブとして保存されたデジタルコンテンツを閲覧すれば、その場にいたかのように過去の出来事を追体験することもできる。まさにVR/ARは「時空を超える」ための技術になりつつある。

VR/ARの経済効果は右肩上がり

 調査会社の英PwCは、世界でVRやARがもたらす経済効果は2020年に957億米ドルとなり、2019年の464億米ドルの約2倍に拡大すると予測する。さらに、2030年までには1.54兆米ドルに達すると予測され、2019年の33倍以上となる見込みだ(図1)。特にAR分野は、VR分野の2倍以上の経済効果を生むとする。

図1 VR/ARがもたらす経済効果
PwCは、世界におけるVR/ARの経済効果は2019年時点で約5兆円だが、2030年には約168兆円と、今後10年で約33倍に急成長すると予測する(為替レートは1ドル=109円で算出、吹き出しの値は合計値)。(図:PwCのデータを基に日経エレクトロニクスが作成)
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 AR分野の経済効果が大きくなるのは、業務改善や働き方改革といったB to B用途で、リアル空間を基に情報を拡張するARやMR(Mixed Reality)の方が、与える影響が大きいからだ。例えば、米マイクロソフト(Microsoft)の「HoloLens」は、MR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)の先駆者として現場に広く導入されてきた。

 MR用HMDは、業務効率化や労働者に新しい働き方をもたらす役割を担う。日本マイクロソフト執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 働き方改革推進担当役員の手島主税氏は「(HoloLensを使うことで)利便性が向上し現在の業務の形が大きく変わるだろう。2次元から3次元へと変化した3D空間での仕事で、新しい働き方を作り出したい」と話す。

 一方のVR分野は、トレーニングやシミュレーション、プロトタイピングなどで企業に導入が進んでおり、今後は医療分野や教育分野などのB to B用途でもさらなる市場拡大を続ける。ただし、現在のVRの主な用途はゲームや音楽エンターテインメントなどのB to C用途にある。民生用途で大きな経済効果を生むためには、スマートフォン(スマホ)のように、まずはハードウエアデバイスが消費者に普及することが欠かせない。

 B to C用途においてはARも同様にデバイスの普及が必要になる。価格や利便性などの課題を解決すると同時に、VR/ARがどれだけ業務や生活を便利にするかが周知されることで、より大きな経済効果につながる。

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