横ばいから微減傾向といった市場予測もあるプリンター市場。先行きに危機感を持つプリンター業界では、オープンイノベーションによって異業種での新市場開拓を目指す企業が少なくない。こうした中で、「手書きのデジタル化」を目標にプリンターを“再開発”するアプローチをとったのがリコーだ。2019年4月に発売したハンディタイプのモノクロインクジェットプリンター「RICOH Handy Printer」は、これまでにないコンセプトが受け、想定の2倍のペースで売れるヒット商品となった。しかし、製品化への道のりは平坦ではなかった。開発部隊はわずか2~3人と“日陰の社内ベンチャー”のような状態で、開発には6年もの時間を要した。

(以下、文中の人名は敬称略)

前編

リコーの「RICOH Handy Printer」
のしや箸袋などにも容易に印字できる(撮影:日経 xTECH)
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社内外から100人以上が参加

 新型モバイルプリンター開発の“言い出しっぺ”である原田泰成(リコー オフィスプリンティング事業本部 開発統括センター 第二PM室 PM三G プロジェクトマネージャー)の考えを具現化したプロトタイプの反響は、予想以上に大きかった。「面白そうなことやってるね。ちょっと混ぜてよ」――新市場の創出を目指す製品は営業から企画、設計・開発まで多くの社員の興味をひき、開発への参加が業務として評価されなくても協力してくれる人が続出した。

 市場ニーズを探ろうと、原田は複合機の商品企画といった別の主要業務を抱えるマーケティング担当の近藤友和(リコー オフィスプリンティング事業本部 事業戦略センター 商品企画室 企画1グループ)の力を借り、顧客先回りに力を入れていた。半年はマーケティングのために顧客先を回り、半年でプロトタイプを作り、また半年で顧客先を回る――気付けばそんなルーチンが出来上がっていた。近藤は別の業務がある中、マーケティング期間だけ同行して顧客先を回った。訪問した企業数は約200。そのうち約9割は原田と近藤の2人で行ったという。

 顧客先では「面白い」「こういう製品があったほうがいい」と言ってくれる人は多く、その“巻き込み力”は大きかった。例えば、医療介護分野でのニーズを探そうと訪れた訪問介護サービスの企業が「これはシステムと連動するといい」とツテのあるシステム会社を紹介してくれた。このように、顧客先自体が開発チームに加わるような状況になっていったのだ。担当者が2~3人と少ない開発チームだったが「結局は社内外を巻き込んで100人以上がチームの一員だったようなもの」と原田は言う。

 顧客から集めた要望に沿って、2015年下期から再度プロトタイプの作製に取り掛かり、2016年夏に無事完成した。本体にはプリンターの状態などを示す液晶パネルにSDカードスロットと、いささか顧客からの要求仕様を盛り込み過ぎた感があり、サイズは大きくなった。

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