みなさんこんにちは。今回から連載を始めさせていただくBASEの取締役EVP of Developmentの藤川です。BASEのメインのビジネスは、ネットショップを簡単に作ることができるWebサービスの開発と運営です。2019年10月には東証マザーズ市場に上場しました。私は2014年にCTOとしてジョインしました。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉の流行が象徴するように、IT活用の巧拙がいまほど企業の競争力を左右する時代はなかったでしょう。大企業はもちろん、BASEのようなスタートアップ企業においても同様です。本連載では私がBASEのCTOなどを通じて得た経験を基に、ソフトウエアエンジニアリングのあるべき姿を論じていきたいと思っています。第1回である今回は、私の考えるエンジニアリングを概観します。

会社の成長にともないCTOの権限を委譲

 まだメンバーが少なかった頃のCTOの仕事は、実質的なテックリード(エンジニアチームのリーダー)、プロジェクトマネジャーでした。その後、会社を大きくするために採用が最重要課題になり、IT情報統制や情報システム、社内セキュリティなどの役割が増えていきました。

 新規の技術課題の多くは主にリスク管理であり非定形の作業であり、まずはCTOが背中を見せる形でプロトタイプを作ってから部下に移譲していくことが求められ、結果としてWebサービスを技術で支えるという役割に割ける時間がどんどん減っていきました。

 その中で、BASEというWebサービスを成長させ続けるために、2019年の7月からCTOを別の者に移譲しました。Webサービスを支える技術を担う現場のリーダーをCTOと定義し、私の責任範囲はそれ以外の役割かつ経営者視点での技術経営に専念するようにし、技術面でビジネスを支えるという機能を複数人で分担するように変化させました。

 従来の大企業においては、CTO職は必ずしも設置されておらず、経営層と技術部門は構造化されているのではないでしょうか。ともすると文系主導と言われがちなこれまでの大企業においては、法務や経済のバックグラウンドを基に大勢の人数をマネジメントすることが最も重要だったからだと思います。

 我々はWebサービスというプロダクトがビジネスの源泉ですから、相対的に少数精鋭のチームで、技術を使いながら人の力をどうレバレッジさせるかがビジネスモデルの基本構造です。例えばセキュリティー1つとっても、Webサービスのセキュリティーにとどまらず社員のPCの不正アクセス対策など、あらゆる要素が連続性を持ち、全てが問題ないことで初めてセキュリティーは維持されます。

 こうした業務を1人のCTOが担うとなると範囲はあまりにも広いわけです。さらに組織自体をあるべき姿にリファクタリングさせ続け、業績にコミットするためにも、信頼できる技術者に権限を移譲してチームとして技術経営を担うことは避けられません。

 技術で会社やサービスを支える組織のスケーラビリティーを維持するために、組織構造を設計し権限を移譲するサイクルを続けて人を育て続ける必要があります。

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