異種材料接合(異材接合)のビジネスチャンスが大きく広がり始めた。締結要素や溶接を使わずに、異なる2つの材料を強固にくっつける接合技術だ。その接合特性を改良する方法の1つが、温度変化による膨張・収縮の差や、弾性率の違いによる変形の差を吸収できる緩衝層だ。緩衝層の工夫により、様々な種類のプラスチックを接合できる技術の開発が進んでいる。

プライマーでズレを吸収

 昭和電工はアルミニウム(AI)合金に様々なプラスチックを接合する技術「SDK接合法」を開発、2019年8月に発表した。化学的な結合を利用し、アンカー効果に頼らない。アンカー効果による技術では難しいとされる、ポリカーボネート(PC)やポリエーテルイミド(PEI)といった、溶融時の流動性が低い材料も接合できるのが特徴だ*1

*1 他にもポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)などを接合できる。

 アルミ合金の表面処理としてプライマー層を形成するのも特徴だ。プラスチックの種類や用途によっても変わるが、熱衝撃のかかる場合などは、それを吸収できるようにプライマー層の厚さは少し厚めにするという。

 SDK接合法を開発したのは、アンカー効果による接合技術が適用できないプラスチックを接合するためだ。「非晶性樹脂は溶融時の粘度が高いため、金属表面に微細な凹凸を作り込んであっても、なかなか入っていかない。そこで発想を変えた」〔昭和電工融合製品開発研究所伊勢崎ユニット兼戦略企画部マネージャー(事業創出)の大谷和男氏〕。Al合金表面にプライマー層を設け、その層をプラスチックと絡ませることにした。プライマーを塗布する処理は、同社が長年手掛けている表面処理技術の応用で実現した(図1)。

図1 SDK接合法(昭和電工)での接合工程
アルミ合金の表面に官能基を設け、プライマーを共有結合させる。プライマーとプラスチック(ポリマー)の間は、互いの分子鎖が絡まる形で結合する。(昭和電工の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 この表面処理は、Al合金の表面を清浄にした後、酸化処理によって化学反応のための官能基の足掛かりを作る*2。そこへ官能基層を設け、プライマーを結合させる。Al合金とプライマーの間には共有結合が生じているようだ。「現在の分析法では完全には分からないものの、共有結合であるのはほぼ確実と考えている」(同氏)。ここまでを昭和電工が担当し、プラスチックとの接合は顧客先が実施する、という想定だ。

*2 「Al合金表面は細かい凹凸がある方が望ましいが、アンカー効果に頼る接合法ではない」という。

 接合時には、射出成形でプラスチックをオーバーモールドするなどの方法で、プラスチックをプライマー層に重ねて熱を加え、冷えれば接合は完了する。射出成形であれば、「接合直後でも25M~30MPaほどの引っ張り強度が得られ、40MPa程度になるものもある」(昭和電工戦略企画部コーポレートマーケティング自動車複合材プロジェクト兼直接接合プロジェクトプロジェクトマネージャーの前川浩志氏)。

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