米テスラ(Tesla)は、電気自動車(EV)の電池パックを交換式にする構想を断念した。同社のEV「モデル3」と「モデルS」を分解・比較して明らかになった(図1分解記事の一覧)。電池交換のアイデアを捨て、他の自動車メーカーと似た方法で航続距離を確保する方針に転換した。

図1 「モデルS」から電池パックを取り外したところ
電池パックは床下に配置されていた。質量は586kgで、寸法は2685×1550×205mm。新潟国際自動車大学校(通称GIA)で分解した。(撮影:日経Automotive)
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 「わずか90秒で電池を交換できる。ガソリン車を“満タン”にするよりも早い」――。TeslaのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク(Elon Musk)氏が豪語し、開発中の電池交換システムを披露したのは2013年6月のことだった。

 日経クロステック/日経Automotiveと日経BP総研のプロジェクトチームが分解したモデルSは2015年に生産された車両で、電池交換式を前提にした電池パックの構造になっていた注1)

注1)2015年式の中古車を購入した。理由はリチウムイオン電池の劣化具合を調べるためで、専門機関で分析を進めている。

 具体的には、電池パックを車体に固定する全てのボルトが、車体外部の床下に配置されていたのである。これなら、ロボットがボルトを取り外し、電池パックを自動で交換することが可能だ。

モデル3開発の途中で断念か

 TeslaはモデルSを発売した後も、2015年に電池交換システムの特許を出願して2017年に公開するなど、実用化に向けて意欲を示しているようだった(図2)。だが実際には、モデル3を発表した2016年3月の時点で電池交換システムと距離を置くことを決めたとみられる。

図2 電池交換システムに関するTeslaの特許
車体を持ち上げて床下の電池を交換する。(出所:特許番号US 9688.252 B2)
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 Teslaが方針を転換した証拠が、モデル3の分解時に出てきた6本のボルトだ。モデルSとは違い、モデル3は電池パックを床下からボルトで取り付けるだけでなく、車室内からも6本のボルトで固定していたのである(図3)。しかも、その6本のボルトにたどり着くには、シートや床下のカーペットなどを取り外さなければならなかった。

図3 モデル3は内装を取り除いてから電池パックを外す
電池を外す直前の状態。シートや床のカーペットなどを外し、車体と電池パックを固定しているねじを取り外す必要があった。(撮影:日経Automotive)
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 TeslaがEVの電池交換式に着目した理由は、消費者が抱える航続距離の不安を解消するためだった。電池を交換式にすれば充電の待ち時間を減らせ、長距離を走れるようになる。Teslaは実用化を断念した理由を明かしていないが、要因の1つが電池交換ステーションのコストだろう。1台分当たり「50万ドル(1ドル=110円換算で5500万円)前後」(Musk氏)と高い。

 電池交換システムに見切りをつけたTeslaは、EV業界の正攻法で航続距離を確保する道を選んだ。

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