これまで遠隔目視で何となく橋を点検してきた自治体にとって、自らが管理する橋梁の実態が明らかになるという点で、近接目視の義務化は非常に意義があった。一方で、懸念もある。見たことのない「変な橋」が思いの外、多かった点だ。主部材に仮設材を使ったり石積みを橋台代わりにしたりと、診断に迷う構造ばかり。今後、どう補修設計すればよいか判断が難しい。

 道路橋示方書に基づいて設計されていない橋、改修を繰り返して構造が分かりづらい橋、特殊な部材で造られた橋―─。1巡目の点検では、マニュアル通りの点検や一般的な補修方法では対処できないような「変な橋」が自治体に数多く存在することが明らかになった。

 普通ではない橋の損傷をどのように評価し、どう付き合っていくのか。十分な予算がない自治体は、高額な詳細調査を伴う診断や膨大な費用がかかる架け替えなどは極力避けたい。以下では橋の事例を基に、うまくやり繰りする点検・診断のコツを紹介する。

主要部材がH形鋼の仮設橋

 1つ目は、奈良県生駒市の住宅街にある神楽橋だ(写真1)。橋長は16.6mで幅員は約4m。橋面には段差の付いた歩道があり、車がすれ違うのは難しい。通行可能な車両の総重量は、最大3tに制限されている。

写真1■ 奈良県生駒市の神楽橋。車が通れる幅員は2.7mほどだ(写真:近畿建設協会、災害科学研究所)
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 どこにでもありそうな一般的な橋に見えるが、一体どこが変なのか。答えは橋の下に潜れば一目瞭然だ。

 橋脚、主桁、横桁など主要部材が全てH形鋼なのだ。主桁と橋脚は連結しておらず、横ずれを防ぐためアングル材を取り付けている(図1)。

図1■ 一般的な橋とは異なる特徴を多く持つ
近畿建設協会と災害科学研究所、生駒市の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 主桁の上には、床版の代わりに設置された鋼矢板が見える。矢板の中にはアスファルト合材が直接流し込まれている。

 神楽橋は宅地造成のための工事車両を通す仮設橋として、1973年に建設された。住宅地が完成した後に市が道路橋として認定し、現在に至っている。

 点検を担当した近畿建設協会の久保元生氏は、「仮設橋としても一般的な構造ではない。当時使える部材を寄せ集めたのではないか」と推測する。

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