劣化の状態を厳しめに診断してしまうのが実務者の心理だ。例えば、本当は健全度IIのはずなのに5年以内の補修が求められる「III」と判定している事例はたくさんある。一度下した診断結果を覆すのは、よほどの理由がないと難しい。実際の劣化よりも程度が軽いと誤って、補修などの対応が遅れるよりはましだが、補修対象が多くなれば早期の対応は厳しい。

 とある市で、鉄筋コンクリート(RC)床版の診断結果が覆った。写真1は、建設コンサルタント会社が納品した点検調書のうち、点検表記録様式2から抜粋した。張り出し床版部の損傷状況だ。鉄筋が大きく露出している。

写真1■ 鉄筋が露出している張り出し床版。点検調書に載っている部材別の損傷状況の写真を抜粋
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 建設コンサルタント会社の下した診断結果は、早期に措置を講ずる必要がある「III」だった。5年以内に補修を完了しなければならない。

 一方、写真2は同じ記録様式に載っていた主桁の損傷状況だ。ただし、ここで注目すべきは主桁でなく、橋の端部の張り出し部だ。先ほどの写真1は、この部分をピンポイントで撮影したものだと分かる。

写真2■ 鉄筋の露出箇所の位置関係が分かる写真。本来は主桁の損傷状況を証明する写真として調書に載っていた
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 市は国土交通省の国道事務所と相談する機会があり、「水抜き穴付近の張り出し床版の鉄筋露出だけであり、あまり荷重がかからない箇所のためIIでよいのではないか」という助言を受けた。その結果、点検調書の納品後に健全度をIIに変更した。

無筋コンクリートのひびをIIIに

 他にもこんな事例があった。ある町が建設コンサルタント会社に点検・診断を依頼。橋台に大きなひびが入っており、健全度IIIで報告してきた。しかしその後、専門家のセカンドオピニオンを受けて、実は進行性がない乾燥収縮だったことが判明。さらに調べると無筋だったので、判定区分を修正している。

 紹介した2つの自治体は事前に対処できたために事なきを得たが、担当者が気づかないだけで誤った診断結果のまま納品されている例は全国にかなりあると思われる。

 国交省は点検と診断を分割して発注するのに対して、多くの自治体は一括で建設コンサルタント会社に委託している。そのために、点検と診断の間でのチェック機能はより働きづらい。

 さらに納品してもらう書類は一般に、国が求めている様式2枚だけだ。書類には、部材ごとの損傷状況が分かる写真を1枚収めるぐらいのスペースしかない。それだけで診断の結果が本当に正しいかどうかを自治体が確認するのは至難の業だ。現地に行くと分かるケースがほとんどだが、それさえも怠っている職員は少なくない。

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