世界のAI開発者が腕を競うコンテストプラットフォームのKaggle(カグル)。対外試合に参加し、課題に挑戦することで実践力が身に付く。Kaggleに挑む「Kaggler(カグラー)」の採用と育成が企業の競争力を左右する。

 ディー・エヌ・エー(DeNA)が2019年6月に提供を始めたAIサービス「DRIVE CHART」。トラック運送会社やタクシー会社などを対象に、国内で年間50万件起きているという交通事故の抑止を支援する。「実証実験を終えて商用利用に至った案件もある」と、サービス開発を担当したAI本部AIシステム部データサイエンス第二グループの松井健一グループマネジャーは語る。

 このサービスのAI開発を主導したのが「Kaggler(カグラー)」と呼ばれるエンジニアたちだ。Kagglerは国際的なAI開発のコンテストプラットフォームの「Kaggle(カグル)」で腕を磨く人たちを指す。

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図 国際的なAI開発コンテストのプラットフォーム「Kaggle」の概要
オンラインで誰でも参加できAI開発の腕を競える(注:数字は2019年10月29日時点。 ※163人のうち日本人は10人前後とされる)
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 Kaggleは米カグル(Kaggle)が2010年に開設。2017年に米グーグル(Google)が同社を買収した。今は企業からの依頼を受けて賞金付きAI開発コンテストを常に10~20件ほどオンラインで開催している。

 コンテストには無料で参加できオンラインで完結するので、Kagglerは世界中にいる。Kagglerは各コンテストで企業から提供されたデータを基に予測モデル、つまり入力データを基に推論するプログラムを開発し、予測精度を競う。

 Kaggleでは製造、交通、医療など様々な企業から提供された実データを使ってAI開発を競う。そのためKaggleのコンテストに参加すると、必然的に多様なデータを取り扱う鍛錬を積み重ねることになる。エンジニアにとってKaggleとは、AI開発の腕を競う「AI道場」のような存在といえる。

 Kaggleのコンテスト期間は2~3カ月ほどが一般的だ。与えられたデータの特性を素早く読み解き、前処理を施し、分析モデルを構築して、プログラムとして実装するまでを2~3カ月でこなすスピード開発が求められる。

 Kaggleのコンテストが対象とする課題は、AI開発プロセス全体から見れば「モデルの実装・評価」という一部分を切り出したものにすぎない。それでもKaggleでの経験を積むことで、前段となる問題の特定やKPI(重要評価指標)設定の知見も身に付くという。

図 Kaggleによって経験を積めるAI開発プロセスの範囲
Kagglerの威力はモデルの実装にとどまらない
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 Kaggleにおいて世界に200人もいない「Grandmaster」の称号を2019年に得たパナソニックの阪田隆司ビジネスイノベーション本部AIソリューションセンター主任技師は「モデル実装の経験を積むことで、その前段となる問題の特定やKPIの設定ができる」と語る。モデルの実装自体はグーグルの「AutoML」などのツールで自動化できるが、前段のプロセスは自動化が極めて困難であり、そこにKagglerとしての経験が生きるという。

パナソニックの阪田隆司イノベーション推進部門 ビジネスイノベーション本部 AIソリューションセンター ビジネスソリューション部主任技師
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 AIを競争力の源泉と見込む複数の企業が、KaggleのようなAIコンテストに注目し、人事戦略や事業戦略に取り込んでいる。Kaggle人材を見いだし、育て、活用する国内の先進3社の取り組みを紹介しよう。

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