新築やリフォームの際に生じる住宅のプロと顧客とのトラブル――。住まいにまつわる紛争処理支援などを手掛ける住宅リフォーム・紛争処理支援センターは毎年、相談が寄せられた紛争案件をベースに「住宅相談統計年報」(以下、年報)を公表している。2019年8月に公表した最新版の18年度データから、リフォームトラブルの実相とクレームを防ぐヒントを探ってみる。

 同センターに寄せられる相談の処理実務は、おおまかに3段階のプロセスに分かれる。まずは1級建築士が相談員となって電話で対応する「電話相談」。次に、全国の弁護士会と連携し、原則として弁護士と1級建築士がペアで対応する対面相談「専門家相談」。3つ目が、指定住宅紛争処理機関(全国の弁護士会に設置)が当事者間の具体的な紛争に対して実施する「住宅紛争処理支援」だ。

 ここでは、電話相談に比べてより差し迫ったトラブルの相談例が多いと思われる「専門家相談」のデータに焦点を当ててみたい。年報の最新版によると、18年度の専門家相談は合計1964件で、このうちリフォーム案件が901件と約半数を占める。「専門家相談は10年度にスタートしたが、リフォーム案件の比率は当初からおおむね変わっていない」。同センター消費者支援部の平井裕一朗担当部長は、こう説明する。

〔図1〕専門家相談の「きっかけ」
「住宅相談統計年報2019」がまとめた18年度データから。有効相談件数は901件で、これらの内容から複数カウントで集計している(資料:住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
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 リフォームの発注者(顧客)が専門家相談を利用した「きっかけ」を相談内容で分類すると、上のグラフが示す傾向が浮かび上がる。最も多いのは「不具合が生じている」。次に多い「契約と工事の内容が異なる」と合わせると、全体の約8割を締めることが分かる。この連載で前回まで紹介してきた事例(「顧客の本心は『そこ』ではない!」「見えない箇所のリスクは怖い!」「顧客の満足度は『プロの提案』が左右」「落ち度がなくてもプロ側の責任に」「提案時の『予断』でプロの信用が失墜」)とも合致する傾向といえるだろう。

 リフォームを含めて家づくりを巡るトラブルは、プロ側に落ち度がある場合は補修や補償などに対処すべきであることは明らかだから、問題解決の道筋自体は見えやすい。だが実際には、プロ側に落ち度がなくても、顧客が「不具合が生じている」「契約と工事の内容が異なる」といった不満を抱くケースも少なくない。この場合は解決が一層、難しくなる。

〔図2〕相談者(顧客)の解決希望内容
「住宅相談統計年報2019」がまとめた18年度データから。相談者(新築やリフォームの顧客)が「どのような解決内容を希望しているか」を複数カウントで分類・集計したデータ。「評価住宅」は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく建設住宅性能評価書の交付が確認できた住宅、「保険付き住宅」は住宅瑕疵担保責任保険(1号保険)付きの住宅をそれぞれ指し、これらはいずれも新築案件の相談例がカウント対象(資料:住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
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 年報の18年度データで、専門家相談における「相談者の解決希望内容」の傾向は、上のグラフのとおりだ。相談者(顧客)が紛争相手のプロ側に求めているのは、「修補してほしい」「修補と損害賠償を請求したい」「損害賠償を請求したい」など、再施工あるいは金銭的な補償といった具体的な要望が圧倒的に多いことが分かる。電話相談よりも一段シビアな専門家相談という段階に至っているためか、「(プロ側の)提案や要求の内容が妥当か、知りたい」という一歩引いた要望は、割合としては少ない。

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