住宅リフォームでは、既存の部材などを撤去したり刷新したりするだけでなく、顧客の要望やプロとしての判断に基づいて、あえて残す場合もある。「捨てる」か「残す」かのいずれを選ぶか、あらかじめ計画段階で顧客と入念に打ち合わせて確認を得ておくべき重要ポイントの1つだ。

 顧客の確認が不可欠のこうしたポイントは、後でトラブルを招く落とし穴にもなりやすい。「言った」「言わない」の水掛け論で、プロ側には非がなくても顧客の不興を買ってしまうケースがある。具体的なクレーム事例をいくつか紹介する。

事例1
既存の幅木を残置利用したらクレーム

 住宅会社の営業担当であるAさんは、「リビングのクロスを貼り替えてほしい」という顧客Bさんの依頼を受けた。Bさんへのヒアリングや現況調査を踏まえ、提案や仕様をまとめるに際してAさんは、クロスのなかでも量産品に比べて種類が豊富な一般品、いわゆる「1000番クロス」を選択。見本帳から選んだサンプルに見積もりを添えてBさんに示すと、Bさんも気に入り、すぐに契約してくれた。

 工事も問題なく終了したのだが、きれいになったリビングで顧客のBさんは、なにやらけげんな表情だった。Bさんが注目していたのは壁と床・天井との取り合い付近。Aさんが「どうかしましたか?」と尋ねると、Bさんはいくぶん怒気を含んだ大声で言い返した。「ここの木材が古いままじゃないか!」

(イラスト:勝田 登司夫)
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 Bさんが指し示したのは、リビングの幅木と廻り縁だった。そもそもこのリフォームの内容はクロスの貼り替えのみ。契約前にAさんが示した提案では幅木や廻り縁の交換には触れておらず、Bさん自身も特に要望していなかった。こうした理屈のうえでAさんに落ち度はない。しかしBさんはどうやら、「幅木なども壁の一部なのだから、当然、クロスの貼り替えに合わせて新しくなる」と思い込んでいたようだ。

 既存の幅木や廻り縁の納まりによっては、単独で交換できる場合もある。しかしBさん宅のリビングでは、幅木の上部に溝を切って壁下地の石こうボード下端を落とし込むという納まりだった。これでは、石こうボードを撤去しないと幅木を交換できない。Aさんはこうした状況をBさんに説明したうえで、「どうしても気になるなら、幅木と廻り縁を塗装する方法があります」と提案。Bさんはようやく落ち着き、「それならば、住みながら少し様子を見てみよう」と、Aさんの追加提案を受け入れた。

 BさんはAさんの釈明と追加提案に納得したが、人によっては深刻なクレーム事案に発展する場合もあり得る。建築に詳しくない一般の顧客なら、Bさんのような思い込みを抱いても不思議ではない。「既存の幅木なども刷新する否か、着工前にBさんへの意向確認が不十分だった。刷新するなら既存材の撤去など、段取りも大きく変わり、追加費用も増える。顧客の確認をおざなりにするリスクを改めて肝に銘じた」。Aさんはこのように話している。

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