日本工営コンサルタント海外事業本部の山田修栄氏(29歳)が大切にしている1本のボールペン。軸には中米ニカラグアの首都マナグアのロゴが入っている。入社3年目で担当した都市マスタープラン策定業務の完了時に、同市の市長と副市長からチーム全員が食事に招かれ、直接手渡されたものだ。

 「発展途上国では日本人技術者は尊敬されており、若手であっても、年上の発注者から対等に接してもらえる。やりがいを感じるし、期待に応えなければという気持ちにもなる」(山田氏)

日本工営コンサルタント海外事業本部の山田修栄氏。1990年東京都生まれ。2014年3月に東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了し、同年4月に日本工営入社。ハノイ(ベトナム)―ビエンチャン(ラオス)間の高速道路事業、ルワンダの新規道路提案、マナグア(ニカラグア)の都市マスタープラン策定などの実績がある(写真:三上 美絵)
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 ニカラグアの業務には交通調査の主担当者として携わり、およそ1万世帯4万人に対してインタビューを実施した。現地の調査会社のスタッフ60人が、1軒ずつ訪問して1日の交通流動を聞き取る調査だ。事前にラジオや市のホームページで協力を呼びかけるなど、万全の準備をして臨んだ。

 ところが、時間になっても調査員が現地に現れない。高所得者層の住む新興住宅地は「ゲーテッドコミュニティー」で、部外者は立ち入れない。

 こんな思いもよらない事態が次々と発生。さらに、インタビューにきちんと答えてくれる人が少なく、回答率が上がらないなど調査は難航した。

 頭を抱えてしまう状況にもかかわらず、山田氏は冷静に対策を考えた。

 仕事をすっぽかして言い訳をする調査員には、毅然とした態度で注意する。自治会の役員や地元の有力者に頼んで一緒に各戸を回ってもらい、調査に協力するよう住民を説得してもらう。ゲーテッドコミュニティーでは警備員を通じて代表者にアポイントメントを取ってもらい、改めて出直す。

 それでも駄目だったときのことを考えて、周辺地域にサンプル数を振り替える用意もしておいた。

ニカラグアでは1万世帯への訪問インタビューを手掛けた。回答率を上げるために機転を利かせ、地元の有力者に同行してもらった(写真:日本工営)
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 「海外、なかでも発展途上国で問われるのは対応力だ」と山田氏は言う。途上国では、日本の常識では考えられないことが当たり前のように起こる。正攻法が通用しなかったとき、いかに臨機応変に素早く的確な次善策を打てるか。その引き出しの多さが物を言う。

 こうした戦略の積み重ねにより、無事にインタビュー調査を成し遂げたことが発注者の信頼につながり、市長から直々に感謝される結果となった。

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