「この道幅だと消防車が大きすぎて通れないな」「コンビニがあった方が便利そうだ」─。30人ほどがブロックで組み立てた街の様子を見ながら、真剣な表情で話し合う。三菱UFJ銀行が2019年度に始めた新人行員向け研修の光景だ。

 新人たちは「全員で協力し、ブロックを使って家族が安心して暮らせる街を1つ作る」という課題を与えられている。当初は設計図を作った上で作業を始めた。ところが制限時間の中で一人ひとりが作業に没頭した結果、「作った車が家よりも大きい」などの問題が頻発した。

 問題を避けるにはどうすべきか。新人たちは自分の担当分野の作業を進める際に、隣の人と相談するようになった。直した方がいい箇所があれば随時修正していく。そのうちに「道路を造る代わりに、ブロックの建物を置いた余白を道路に見立てた方が早く作れる」といったアイデアを出し合う雰囲気がチーム全体に生まれていった。

●三菱UFJ銀行が新人向けに実施する街づくりブロック研修
(写真提供:三菱UFJフィナンシャル・グループ)
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 ブロックによる街づくりを通じて「アジャイル開発」の流儀を体感してもらう。これが研修の狙いだ。仕様や計画をあらかじめきっちり定めて、分業体制でシステムを構築するウォーターフォール開発と異なり、アジャイル開発は少人数のチームが密にコミュニケーションを図りつつ、変化に柔軟に対応してシステム構築を進める。

 「コミュニケーションを取る大切さや、固定観念にとらわれずに解決方法を模索するやり方を学んでほしい」と、三菱UFJ銀行人事部採用・キャリアグループ次長の朝倉正樹氏は話す。この研修を2019年4月に入行した約1000人の新人全員に実施した。

デジタル活用のコア人材を育成

 三菱UFJ銀行が新人研修で狙うのは「デジタル人材」を育成し、デジタル活用の風土を全行に浸透させることだ。アジャイル開発はデジタル施策に欠かせないシステム開発手法である。

 金融に限らず、あらゆる業界で重要なキーワードとして浮上しているDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル変革)。グループ中核企業の三菱UFJ銀行をはじめとする三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はDXに対する取り組みを加速させている。40人体制でデジタルイノベーション推進部を設立したのは2015年5月。現在は120人から成るデジタル企画部が戦略子会社のJapan Digital Design(JDD)とともにデジタル施策を推進している。

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