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 Q  4  工場内の機械と材料は5Gの通信の障害にならない?

 A  当初、問題を指摘されていたが、技術的に解決できる見込みが立っている。

 工作機械や組み立て中の部品、加工中の金属材料などが大量に存在する工場。当初は「5Gでの通信ネットワークを構築するのは困難ではないか」と危ぶむ声もあった。5Gの無線通信で使われる高周波数帯の電波は、直進性が高く、金属に反射するという特性を持つからだ。

 電波は周波数が低いほど障害物を回り込む(回析する)特性を持つ。周波数帯が5GHz以下のWi-Fiであれば、基地局が発した電波が工場内の工作機械や金属部品の山を回り込むので、無線端末がそれらの陰にあっても電波は届く。

 逆に周波数が高くなるほど直進性が高くなり、障害物を回り込まなくなる。特に新たに5Gで使える28GHz帯のミリ波はこうした特性が強い。工作機械などの障害物をほとんど回り込まない恐れがある。また、電波はガラスや磁器質タイル、モルタルならある程度透過するが、金属には反射する。金属製の工作機械や部品、材料だらけの工場内には、これらの障害物に遮蔽される「死角」が生じて通信障害が生じやすいと懸念された。

 障害が生じないようにするには、工場内のあちこちに5Gの基地局を設置する方策も考えられる。しかし、多数の基地局が工場内にあると作業の邪魔になり得るし、高コストになるので現実的ではないとの見方が多かった。

 しかし現在では、反射・遮蔽による通信の死角の発生は防げるとの見通しが立っている。工場内に電波の反射板を設置して、基地局からの電波を迂回させる手法が開発されているからだ。

 NTTドコモは米Metawaveと連携し、メタマテリアル技術*1を採用して、直進性の高い高周波数帯の電波を迂回させられる電波反射板を開発している。5Gで用いられる28GHz帯のビームを当てて必要な向きに反射させ、反射板がない時に比べてスループット(実効伝送速度)を大幅に改善できると確認済みだ。NTTドコモによると、この反射板の材料は低コストで電源も不要だ。工場内に適切に設置すれば、通信の死角の発生を防げると期待されている。

*1 メタマテリアル技術
波の振る舞いを変えられる技術。波長の1/5~1/2といった寸法の微細構造を設け、本来の波とは異なる振る舞いをさせる。一般に、反射板に電波を照射すると、反射面の垂線に対する角度が入射波と反射波で同じ、つまり対称になる。メタマテリアルの反射板では、入射波と反射波が対称になならない角度にも反射させられる。

メタマテリアル技術を採用した反射板
波の振る舞いをAI(人工知能)で設計するノウハウを持つ米Metawaveと連携して反射板に適用。数mm周期とみられる繰り返し構造を一般的なプリント基板ベースのアンテナに作り込んだ。(出所:NTTドコモ)
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反射板を活用した通信のイメージ
5Gの基地局が発した電波を、メタマテリアル技術を活用した電波反射板に反射させれば、工作機械などの陰に隠れて遮蔽されていたエリアに電波を届かせられる。
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 また、工場全体ではなく、大容量・高速通信が必要なエリアだけに5Gの基地局を設置する考え方もある。ユーザーの使い方に合わせて適正な技術を採用し、適正に設計すれば、金属製の工作機械や材料でいっぱいの工場でも5Gの通信ネットワークを有効に活用できそうだ。

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