Q  1  5G導入で工場はどう変わる?

 A  工場内の通信ネットワークの無線化が一気に進む。これにより、ネットワークに接続している設備の配置を柔軟に変更する、データを常時送受信するセンサーや無人搬送車(AGV)の数を大幅に増やす、大容量データを使った作業支援をリアルタイムに実施するといった取り組みが可能になる。

 5Gを適用したネットワークソリューションの提供を予定している富士通によると、同社に対して5Gに関する相談を持ちかける企業で最も多いのは、製造業だという。最も大きな期待は、製造現場の通信ネットワークの無線化だ。つまり「ケーブルからの解放」である。

 既存の無線通信技術、例えばWi-Fiを使って工場内ネットワークの無線化を始めているメーカーは少なくない。しかし、通信中の機器が増えるほど通信が途切れやすくなるなど不安定で信頼性に欠ける、Wi-Fiは認証や管理の面でセキュリティー上の不安もある、との声も多い。

 これに対して、5Gによる通信ネットワークは仕様上、99.999%通信が途切れないとされている。セキュリティー面でも、5GはSIMカード内の「書き換えできない情報」で認証するため、ネットワークに接続した無線端末を特定できるなど安心感がある*1。こうした特徴に加え、既存の無線通信よりも5Gは「高速・大容量(eMMB)」「多数同時接続(mMTC)」「高信頼・低遅延(URLLC)」といった性能を強化された。そのため、多くの企業が「5Gによる工場内ネットワークの無線化」に大きな期待を抱いているのだ。

*1 SIMによる認証は4Gでもできる。

遠隔作業支援もスムーズに

 では、具体的にどのような活用が考えられるのか。「通信環境が改善し、さまざまな作業を速く、確実に進められるようになる」。これが5G導入によって工場が変わるポイントだろう。

 工場内ネットワークを5Gで構築すれば、設備間を接続するケーブルなどが不要になる。つまり、生産ラインのレイアウトを柔軟に変更できるようになる。加えて、有線通信を適用しにくいAGVの制御も変わる。Wi-Fiは同時接続数に制約があったが、5Gにすれば同時接続数が増えるし、通信が途切れてAGVによる搬送が遅れるといった不安も減る。

レイアウトが自由な生産ラインのイメージ
NTTドコモとノキアソリューションズ&ネットワークス、オムロンが2019年9月10日、製造現場における5G活用実証実験に合意したと発表した。図は、その際に公表されたレイアウトが自由な生産ラインのイメージ。5Gを活用して生産設備を無線ネットワーク化している。(出所:NTTドコモ)
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 データを高速かつ低遅延で送受信できる点にも期待が集まる。例えば、スマートグラスを使った遠隔作業支援だ。既存の無線通信技術での活用例もあるが、5Gならば大容量の精細な映像を短時間で送受信できる。材料の表面の仕上げや部品の接合部などを遠隔地から実物のように見られれば、指導者はより正確な判断を下せる。低遅延、つまりリアルタイム性の高さは、瞬時の判断が必要な現場でのタイムリーな指示につながる。

 下の表はドイツZVEIがまとめた産業向けの5Gのユースケース。要件を満たせば工場内での5G活用が可能になる。これら以外にも、5Gによる工場内ネットワークの無線化は、デジタルデータ活用の可能性を大きく広げるだろう。工場のIoT(Internet of Things)化やスマート化からデジタルツインの実現、情報端末の携帯性向上まで、工場のデジタル環境を大きく進展させる起爆剤に5Gはなり得る。

ドイツで検討されている5Gのユースケース
(出所:ZVEI)
ユースケース 信頼性 サイクルタイム データ転送量 接続台数 利用範囲
モーション制御 工作機械 99.9999% 以上 0.5m秒未満 50バイト 20以下 15m×15m×3m
印刷機 2m秒未満 20バイト 100以上 100m×100m×30m
包装機 1m秒未満 40バイト 50未満 10m×5m×3m
移動ロボット 協調制御 1m秒 40~250バイト 100 1km2未満
映像による遠隔操作 10m~100m秒 15~150バイト 100 1km2未満
安全機能を持つ制御盤 組み立てロボット、 またはフライス盤 4m~8m秒 未満 40~250バイト 4 10m×10m
移動式クレーン 12m秒 40~250バイト 2 40m×60m
プロセス自動化(プロセス監視) 50m秒以上 規定なし 1万デバイス/km2

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