日本の技術力の低下が指摘されて久しい。技術力を推し量るバロメーターの1つが、国内外で開催される大型の見本市だ。長らく国内外の見本市を取材しているMM総研代表取締役所長で、ITジャーナリストの関口和一氏はどう見ているのか。同氏は「CEATEC 2019」(10月15~18日)に明るい兆しを見たと言う。

 アジア最大級の家電・IT見本市「CEATEC(シーテック) 2019」が2019年10月中旬、千葉県の幕張メッセで開かれた。18年までは「CEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies)JAPAN」と称していたが、開催20年を迎えた今年から「ジャパン」を落とし、国際的な見本市であることをアピールした。

 家電といえばかつては日本の花形産業だったが、韓国や中国の追い上げにより最近では日本の存在感はすっかり薄れてしまった。シーテックの来場者数も減少の一途をたどってきたが、実はここへ来て新たな変化が起きている。展示内容を家電の見本市からIoT(インターネット・オブ・シングス) 技術の見本市へとカジを切ったことで、日本の技術力に対して再び関心が高まっているからだ。

 「リチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰氏にノーベル化学賞が贈られたが、今年のシーテック・アワードでは次世代の全固体電池を開発した村田製作所に経済産業大臣賞が贈られることになった」。見本市の初日、レセプションであいさつした経産省の牧原秀樹副大臣は今回のシーテックでの受賞を引き合いに出し、「日本の技術力はまだまだ衰えていない」と訴えた。

 エネルギー密度が高いリチウムイオン電池はスマートフォン(スマホ)や電気自動車(EV)などで利用が広がったが、さらに安全性と耐久性を兼ね備えた小型の全固体電池は、長時間駆動を必要とするウエアラブル端末などでの利用が期待できる。まさにIoT社会を支える将来の重要技術というわけだ。

 会場では電気で動く自動運転バスの体験乗車も話題となった。ソフトバンク子会社のSBドライブ(東京・港)がフランスのNAVYA製の電動バスを使ってサービスを提供したもので、信号機メーカーの日本信号と協力し、信号情報をリアルタイムにクラウド経由で収集することで、人通りの多い街中でも自動運転を可能にした。

CEATEC会場周辺を回った自動運転電気バス
(写真:関口和一、以下同)
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 「なぜシーテックで電気自動車なんだと言われることもありますが、こうしたネットワークによる信号情報の活用はまさにIoTの技術です」とCEATEC実施協議会のエグゼクティブプロデューサー、鹿野清氏は言う。韓国や中国に追われる家電製品にばかりこだわっていては「シーテックを開催する意味がなくなってしまう」というわけだ。

 シーテックの変身ぶりは出展者や来場者の数にも表れている。家電・エレクトロニクス技術見本市の「エレクトロニクスショー」と通信技術見本市の「COM(コム)ジャパン」が合体して2000年に始まったのがシーテックだが、ピークの2007年には895社・団体が出展し、350社近くを海外勢が占めた。来場者数も20万人を超えたが、翌2008年の「リーマン・ショック」を機に出展者数が減少。2015年には4割減の531社・団体に減り、来場者数は約13万3000人に落ち込んでしまった。

CEATECへの出展者数の推移
(図:CEATEC)
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 韓国や中国の追い上げに加え、アップルやグーグルなどの米IT企業がスマホやタブレットといった新しい情報機器を投入し、家電のスタイルを大きく変えてしまったことも背景にある。

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