若手の看護師が患者の様子を音声で記録する。すると装着しているヘッドセットから、「黄疸(おうだん)は出ていますか」「熱はありますか」とアドバイスが聞こえる。看護師にアドバイスした声の主はAI(人工知能)――。こんな時代が近づいている。AIやロボット、情報通信技術(ICT)などの先端技術を導入し、病院が変わり始めている(図1)。

図1 病院が様々な技術を取り込んでいる。
手術や搬送、リハビリにロボットを活用したり、音声入力で効率化を実現したりする病院が現れた。手術中の情報をIoTで表示したり、治療・健康情報を共有したりする取り組みも始まった。AI活用も進む。(図:日経 xTECH、写真提供:北原病院グループ、倉敷中央病院、HITO病院)
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スタッフの技量の差を埋める

 冒頭のAIシステムは、東京八王子市に拠点を置く北原病院グループがNECと共同で開発しているものだ(写真1)。若手の看護師と熟練の看護師では、患者を観察してから状況を把握したり状態を予想したりする技量に差がある。差が生まれる要因は経験値だ。熟練の看護師の判断を学習させたAIを使うことで、若手の看護師でも熟練の看護師が何気なく把握していることを確認できるようにする。

写真1 開発中のAIのイメージ
例えば看護師が患者の様子を音声で記録すると、内容に応じてAIからアドバイスをもらえる。(出所:北原病院グループ)

 北原病院グループは他にも、患者に装着したセンサーで皮膚温度や心拍数などを計測することで、不穏行動の予兆を察知する試みを進めている。不穏行動とは、患者が点滴を自分で抜いてしまったり、暴言を吐いたり暴れたりすることなどを指す。不穏行動を起こす患者は、そうでない患者と比較して入院期間が長引く傾向にある。不穏行動を起こした患者の受け入れが難しい医療機関があり、患者が転院先を探すのに苦労するためだ。不穏行動を察知して防げれば、病院にとっても患者にとってもメリットがある。

 これまでは熟練の看護師が、患者の表情や感情表現の様子、口数などから不穏行動の予兆を察知し、声をかけるなどして防いできた。「若手の看護師でも熟練の看護師のように患者をケアできるようになれば、これまで個人の能力に依存していた医療の質を向上させると共に、効率よくスタッフを配置できる」と北原病院グループは期待する。

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