Sさん(30代後半)は通信会社A社の情報システム部門で人材育成策の企画・立案を担当する指導のエキスパートだ。そんなSさんが効果を実感している若手指導の方法がある。それは、他人を指導した経験のない2~3年目の若手社員に、あえて新入社員の指導を任せるというものだ。

 といっても、若手社員はビジネスの常識や仕事のやり方を新入社員に教えるだけではない。自分が手掛けている仕事の進め方を見習わせたり、仕事の一部を新入社員にアサインしたりするなど指導範囲は広い。

 その結果、この若手社員は「指導する側としてしっかりしなければ、と自覚するだけでなく、新入社員に教えるうえで自分に不足している知識や技術を明確に意識するようになる。さらに、以前に自分が受けた指導を実践することで、理解が深まる」(Sさん)。

人手不足で2年目の若手を抜擢

 Sさんが新入社員を2~3年目の若手に指導させることの利点に気付いたのは、この方法によってある社員の力が急速に伸びたことがきっかけだった。

入社2~3年目の社員が新入社員を指導することで伸びる理由
[画像のクリックで拡大表示]

 それはかつて新卒者の大量採用が続いていた時期のことだ。Sさんが所属する情報システム部門にも数多くの新入社員が配属された。このとき人手不足から、ある2年目の若手に新入社員の指導を全面的に任せざるを得なくなった。