ITの現場では、若手の能力や性格、置かれた状況に応じて指導方法を考案したり工夫したりすることが欠かせない。本特集では日経ITプロフェッショナルの過去記事を再編集した。若手指導に熱心な3人の経験や試行錯誤の過程を通じて、実践的な育成法の姿を紹介する。

 若手指導のキーワードは「3年後の目標人物」と「3人組のチーム編成」――。こう説くのはITコンサルタントのWさん(30代前半)だ。

 Wさんがかつて在籍していた大手通信会社のSI(システムインテグレーション)関連の部署は、若い社員が大半を占めていた。そのため同氏は、入社2年目にして後輩の指導役を果たさなければならなかった。手本となる上司や先輩が少ないので、指導方法は自分で試行錯誤しながら工夫したという。

 そうした中で同氏が見いだし、その後の経験で有効性を確認できたのが、冒頭のキーワードに象徴される2つの指導方法だ。

目標には現実味が必要

 まず「3年後の目標人物」とは、若手社員1人ひとりに「自分が目標とする人物」を決めさせることだ。といっても「いつかはああなりたい」といった漠然としたものではない。「3年以内に、あの先輩社員が持っている、このスキルとこの知識を身に付ける」といった具体的な目標を設定させ、宣言させる。

Wさんが実践してきた、部下に「3年後の目標人物」を決めさせる方法
「自分よりはるかに実力の高い人物」ではなく、「3年後にはそのレベルに到達したい身近な先輩」を目標として設定させる
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 そのときに重要なのは、同じ部署にいる3年ほど先輩の優秀な社員など、できるだけ身近な存在を目標にさせること。「歳が近く、レベルもかけ離れていなければ、現実的な目標としてとらえられる」(Wさん)からである。加えて、目標に到達するための方法や手順などを、最もよくアドバイスできるのも目標とする人物だ。そのような人物が身近にいれば都合がよい。

 Wさんは当時、自分が担当するプロジェクトチームの若手社員が目標とする先輩社員を決めると、その人物に直接かけあって指導を依頼した。「どんな仕事のやり方をしてきたか」「どうやってスキルを身に付けてきたか」といったことを直接アドバイスしてもらい、若手社員が何をすべきかを具体的に考えられるようにするためだ。