今週は、恒例のノーベル賞発表の週。日本の研究者が受賞する可能性があるのは、生理学・医学賞と化学賞といえる。後者のノーベル化学賞では、この数年、Liイオン2次電池(LIB)とその開発関係者が受賞するのではないかと言われ続けてきた。ところが、最近は生化学や分子生物学分野での受賞が多く、無機材料の研究開発などは蚊帳の外という印象だ。

 ただ、海外の受賞予想を見ていると、特に2017年ごろから、LIBの開発を最有力候補の1つに挙げる例が目立ってきている。2017年10月の発表でLIBが受賞から漏れた際には、「ノーベル賞の選考者は、我々の生活を大きく変えつつあるCRISPR(クリスパー)とLIBを忘れている」と批判する声まであった。

 2018年10月のノーベル化学賞の最有力候補も、この「CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)/Cas9 (Crispr ASsociated protein 9)」とLIBだ。

 CRISPR/Cas9は、一般には「ゲノム編集」とも呼ばれる技術である。その基礎となるCRISPRを発見した研究者は九州大学 教授の石野良純氏。受賞テーマがCRISPR/Cas9でも日本の研究者が受賞する可能性がある。

現時点での社会的影響力はLIBに軍配

 もっともCRISPR/Cas9には、「受賞するのは確実だが、いつ受賞するかは分からない」「医学の現場で役に立つのはこれから」という声もあり、社会的影響力という点ではこれからの技術だ。受賞すべき賞も化学賞ではなく、生理学・医学賞だといえる。

 一方、LIBは社会的インパクトは既に十分で、さらに近未来の社会の青写真を大幅に塗り替えつつある。スマートフォンはいうに及ばず、ドローンやEV(電気自動車)、さらには電力系統の安定化などに大きな役割を果たしつつあるからだ。この点でいつノーベル化学賞を受賞してもおかしくない技術であるのは間違いない。

LIBの“父”が多数

 LIBの開発には、日本の研究者数人が大きな役割を果たしており、国内ではLIBが受賞=日本の研究者が選ばれる、と断定的に報道する例もあるようだ。

 ただ、多くの科学技術がそうであるように、LIBの開発も多くの研究者による成果の積み重ねから成っており、受賞候補者を3人に絞るのは容易ではない。LIB開発の“父”と呼ばれる研究者は、5~6人はいる。海外の報道では、受賞者候補に日本人が入っていない例も多い。

 今回は、LIBの開発で重要な役割を果たした研究者にはどのような人がいるのかを紹介し、それぞれの受賞可能性を探ってみることにする。

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