固体電解質の研究で、2011年に非常に大きなブレークスルーがあった。東京工業大学の菅野了次先生が、Liイオン伝導度が液系電解質とほぼ同じ、硫化物系のLGPS(リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)という固体電解質の材料を見出したことだ。LGPSはLiイオンのキャリア数が液系の30倍で、イオン伝導度が30mol/Lと巨大な数字になった(図1)。一方、PFG-NMR法で測定したモビリティーは液系の1/30で、決してモビリティーが上がったわけではない。液系の1/30しか出ていないということは、まだまだ改良の余地があるということを示している。

 キャリア数を維持しながらモビリティーを上げることができれば、液系のイオン伝導度を追い越せる可能性がある。実際に、2016年にはトヨタ自動車と東工大が、イオン伝導度が液系の2.5倍に相当する材料を発表した(図1)。2.5倍というのは絶対値で言うと25mS/cmだ。2.5倍といってもまだ上限ではなく、今後さらに上がる可能性がある。

 このような固体電解質が見つかったことで、初めて実際の全固体電池が試作され、この2~3年で電池特性が明らかになってきた。それまで考えられてきた特性と真逆に近い結果となった。短所だと思われていた出力特性と低温特性が実は優れていた。一方、デンドライトは発生しないと思われていたが、実際は発生した。ここまでが「次世代電池2018」(2017年、日経BP社)で述べた内容だ。

 今回は、今後の電池開発において全固体電池の特性から何を学ぶべきかという観点で述べていく。また、次世代電池が実現し社会全体で電動化が進んだ未来には、クルマ社会がどのように変わっていくかを述べる注)

注)この記事は2018年6月15日に開催されたセミナー「革新的電池が巻き起こすEVイノベーション」(主催:日経 xTECH/日経BP総研)における吉野彰氏の講演「全固体電池の真髄と未来の車社会」の内容を、吉野氏の許可を得て編集、再構成したものです。

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