日本でトヨタ生産方式(TPS)の話をすると、「またか」と感じる人が多いし、「どうせ製造業の話だろう」とか、中には「工場でしか通用しない」と間違った理解をしている人は少なくない。これは勉強すれば済む話だし、そもそも経営やマネジメントに興味を持っていない人にとっては仕方がないことかもしれない。ただ、気になるのは、40歳代から70歳代の人にこうした傾向が顕著に見られることだ。

 これは、高度経済成長期に仕事をしてきた人にとっては、生産性を高められる唯一の手段が技術だったからではないか。逆に言えば、「技術が遅れている=競争に勝てない」という図式が出来上がっているのだ。しかし、今でも技術が進化しているとはいえ、それよりも現在は優れたアイデアや発想でビジネス価値を創造していける状況になっている。

トヨタに学ぶ海外、学ばない日本
トヨタはトヨタ生産方式の考えをマネジメント・経営に昇華させて成長を続けている。この事実を知る海外企業はトヨタ流マネジメントをリーンとして経営に取り入れて成長に結び付けている。ところが、日本では「またトヨタか」「トヨタ生産方式は工場だけ」という声が依然として多い。(作成:日経 xTECH)
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 この点で、米グーグル(Google)の考えは面白い。最初はベンチャー企業だった同社も、成長して会社が大きくなってくると、組織の壁が生じたり、価値観が合わないための意思決定の遅れなどが目立つようになった。ここで、共通の価値観を醸成するカルチャーをつくらないと、企業が拡大してく上で膨大なムダなコストが発生することに気付いたのだろう。だからこそ、TPS源流の「リーン(Lean)」をグーグルは導入したのだ。

「なぜなぜ分析」で真因を導き出せる人は5%

 実は、リーンを研究していくと、基本的にTPSで使っている「なぜなぜ分析」や「A3(A3判の大きさのフォーマットを使った)」による問題解決や課題解決手法、VSM(Value Stream Map、物と情報の流れ図)などを流用していることが分かる。正直に言って、リーンで独自に開発された高度なツールを使っているわけではない。いずれも、トヨタ自動車では仕事においてごく普通に使っているツールだ。

 心配なのは、一般的な日本企業の実力水準である。筆者はトヨタ流マネジメントシステム(TMS)の3級プログラム(12日を6カ月かけて実施するプログラム)の開発および講師を行なっているが、驚くのは、プログラム受講者に「なぜなぜ分析で真因(真の原因)を見つけてください」と課題を出しても、真因までたどり着ける人は、実に5%程度しかいないことである。

 これはつまり、仕事の仕方が受け身的で、自ら物事の本質を考えて仕事をしていないということを表している。そのため、現場は品質を満たせず、手戻りや設計ミスなどさまざまな問題を生んでいて、見えないところで経営的な損失をかなり発生させている。これが日本企業の生産性が低い大きな要因の1つだ。

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