手掛ける食品が様々なように、食品メーカーの働き方改革は多種多様だ。キユーピーは2020年の東京オリンピック・パラリンピックで予想される交通混雑を見据えて、テレワークの普及を進めている。

 東京・渋谷の本社近くにはオリンピックスタジアムや国立代々木競技場、大規模拠点を置く京王線沿線には東京スタジアム。2020年夏の東京オリンピック・パラリンピック期間中は観客の移動などによる交通混雑で、社員が普段通り通勤するのは難しくなりそうだ――。

 こうした課題に備えるべく、キユーピーはオフィスの自席以外でノートパソコンなどを使って仕事をするテレワークの社内普及を進めている。「東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けた協力と、社員の安全確保や通勤時の負担軽減のため、テレワークの普及を社内でより一層進めている」と同社の南浩司人事本部労務部労務チームチームリーダーは説明する。

 テレワークの社内普及のため、2019年7月から9月にかけて政府が主導したテレワークの全国キャンペーン「テレワーク・デイズ2019」に参加した。期間中、最大で約310人の社員が大会期間中の交通混雑に備えてテレワークの大規模予行演習に取り組んだ。

 参加した社員はあらかじめテレワークをする日を2日、決めたうえで事前に申請して試した。「東京オリンピック・パラリンピックの競技日程と開催場所は事前に分かっている。それを踏まえて社員が自身の通勤などに支障が出そうな日を見極めて、計画的にテレワークできるようにする」(南チームリーダー)ことを狙った。

 キユーピーが進める大会期間中のテレワークには特徴がある。社員が住んでいる場所に応じて2種類のテレワークを使い分けている点だ。社員が多く住む京王線沿線や、埼玉、茨城に住んでいる社員は自社拠点に設けたサテライトオフィスでテレワークをする。拠点がない千葉に住む社員は在宅勤務、つまり自宅でテレワークをする。

キユーピーが進める五輪大会期間中のテレワーク施策の概要。社員が住んだり働いたりしている場所に合ったテレワークを進める
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 具体的には、東京・府中の中河原工場内にある研修施設や、茨城県五霞町の工場、さいたま市の自社拠点などを、普段は別の拠点に自席がある社員がサテライトオフィスとして利用できるようにした。

 京王線沿線の東京・仙川には社員1300人ほどが働く大規模拠点「仙川キユーポート」があり、同じ京王線沿線にはサッカーなどの会場である東京スタジアムもある。東京スタジアムの最寄り駅である飛田給駅を通って、仙川キユーポートへ通勤している社員は少なくない。大会期間中は飛田給駅付近が混雑して通勤が難しくなる恐れがある。そこで飛田給駅を通らなくて済むよう、東京・府中にある中河原のサテライトオフィスに出勤してもらうことにしている。

キユーピーが自社拠点に整備しているサテライトオフィスの例
(出所:キユーピー)
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 また、オリンピックスタジアムや国立代々木競技場が近くにある東京・渋谷の本社付近も同様の混雑が予想される。ここで働くおよそ800人の社員のうち、埼玉県などから出勤する社員は、都心に向かわなくても済むよう、さいたま市の大宮にある拠点や、茨城県五霞町の工場のサテライトオフィスでテレワークをする予定にしている。

 さらに千葉県エリアに住む社員に向けては、在宅勤務ができるように、Wi-Fiルーターを貸し出して自宅でパソコン作業ができるようにする。普段は管理職向けに配布しているWi-Fiルーターを在宅勤務が必要な社員に貸し出す予定だ。「どうしても混雑する拠点に出社する必要がある社員に対しては混雑を避けて通勤する時差出勤を勧めている」(南チームリーダー)。

 2019年7月から9月までのテレワーク・デイズではWeb会議システムを使った会議も試した。ある部署では東京・渋谷の本社、府中のサテライトオフィス、在宅勤務をする社員がWeb会議システムによる会議を試した。通常通り会議を進められたという。

 テレワークの試行は台風による鉄道の運休対策にも役立った。テレワーク・デイズの試行期間が終わった直後の2019年9月8日の午前、関東地方に台風が接近したことで多くの路線で計画運休を実施。一部の路線では倒木などで運休に追い込まれた。

 東京・渋谷の本社で働くある社員は通勤路線が運休し、出社が難しくなった。しかし、慌てることなく、復旧している別の路線を使って、他拠点にあるサテライトオフィスに出社。通常通り仕事を続けられたという。「社員は体力的な負担を減らせて、時間も効率的に活用できる。会社としても事業を継続できるメリットが大きい」。南チームリーダーは効果についてこう語る。

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