物流が逼迫している。

 ビッグデータや人工知能(AI)を使って倉庫内業務や配送ルートの選択を最適化するのもよいけれど、それは既存業務を“匠のレベル”まで押し上げているにすぎない。物流業務そのものの高度化ではなく、工夫のしどころを変えているようなケースを、配送、梱包、そして返品の3つの視点から見てみよう。

ケーススタディ1:顧客の力を借りる

 例えば、アマゾン・ドット・コムは米英で「ノーラッシュシッピング(お急がない便)」を展開する。この取り組みでは、通常2営業日以内の配達を、顧客が「5営業日内でいいよ」と融通を効かせると、クーポンがもらえる1)。結果、「急ぐわけではなく、おトクに買物をしたい」顧客と、「配送の集中を避けたい」サービス提供者、双方の利害が一致する。これらの手続きは、スマホのアプリやブラウザ上の発注画面で、「お急がない便」という選択肢を提示するだけで事足りる。

 かつて日本でも良品計画が、「無印良品週間」と呼ばれるキャンペーン期間のみ「遅得」というプログラムを実施し、「急がなくてよいのでお得に」という選択肢を示した2)。そもそも無印良品週間は価格が10%オフになるが、その結果として同社の受注件数は通常時の6~7倍になるという課題があった。遅得は、この期間における配送業務の平準化を狙い行われた。2013年11月の無印良品週間においては、遅得の利用者が約1万9000人にのぼったという。

 このように、事業者が顧客の協力を明に取り付けることで事業を高度化するという取り組みを、筆者は「主客一体経営」と呼んでいる。サプライサイドだけで踏ん張るのではなく、デマンドサイドの協力を得て全体最適を実現しようという取り組みだ。

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