みんなが必要とするものを、より良い品質で、より早く、より安く作っていれば会社の成長は疑いない。そんな幸福な時代は残念ながら終わってしまった。多様化する消費者の嗜好や、ニッチな社会課題など、「スケールしないなあ」と思いつつも取り組まざるを得ないケースは増えている。そのようなケースへの対処は、個別最適による訴求、パーソナライズだ。

 米国のグーグルやアマゾン・ドット・コム、フェイスブックをはじめとしたネット事業者は「モノ」を提供しなくてよい身軽さからも、パーソナライズへの取り組みは早く、そして徹底している。極端な事例として、動画配信サイト「Netflix(ネットフリックス)」を運営する米ネットフリックスを見てみよう。

 ネットフリックスはもとより「あの人にどの動画を薦めれば高く評価されるか?」ということを大量のデータから見定めることに注力してきた。近年では、この「誰に何をお勧めするか?」にとどまらず、「あの人にならばどのようにお勧めするか?」という点まで踏み込み、動画推奨の際に用いるサムネイル画像の生成を効率化しようとしている1)。30分の動画は約10万枚の画像からできているが、その中から主要な出演者が良い構図にあり、誰一人としてまばたきしていないといった、サムネイルに使いやすい画像を抽出する技術の開発を進めている。これまでクリエイターが行っていた作業を人工知能に支援させようとしているのだ。

 これによって、何ができるか。例えば名作「グッド・ウィル・ハンティング」をオススメする際にも、ロマンス好きのユーザーには主演であるマット・デイモンとミニー・ドライバーが仲むつまじくしている様子のサムネイルを示す。コメディー好きのユーザーには本作でアカデミー賞を受賞したコメディアン、ロビン・ウィリアムズを前面に出したサムネイルを示す。ネットフリックスが行った実験では、顧客嗜好に合わせたサムネイルを提示することで視聴に至る割合は大きく増加した。

 このネットフリックスの事例はパーソナライズへの執念を感じさせる好例であるだけでなく、一方でモノが関与しない気軽さもある。果たして、モノの提供におけるパーソナライズとしてどのような戦い方があるのか。5つの事例を通して見てみよう。

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