弁当をほぼ毎日手作りするのは大変なことだが、最近このような不便なことから得られる益も多いということを気づいた。「不便益」という言葉を知ってからのことだ。不便なことから有益なことを見つけることは、日常生活だけではなく、商品企画や研究開発などにも参考になることが多い。今回、手作り弁当から感じた不便益、そしてスマートキッチンや自動運転などで最近注目度の高い「スマート」と不便益の関係について考えてみる。

手作り弁当の「不便」と「益」

 家事分担の関係で、筆者は得意の料理を生かして子どもの弁当を数年間にわたって作っている。料理に自信があったこともあり、当初はそれほど大変なことだと思わなかった。しかし、長期間作り続けていると、だんだんと不便さを感じてくる。毎日の献立を何にするか考えなければいけない上、食材の事前準備や前夜の炊飯器の予約も忘れてはいけない。朝も目覚まし時計で早く起きることが必要だし、学校のテストの週になるともっと早起きになる。既製品の利用も可能だが、添加物が多すぎる冷凍食品や前日買った味の濃い総菜への不信感で、なるべく使わず手作りにこだわる。そのため、手間と脳力がかかる。あと何年続けられるか、そう思ったときもあった。

 しかし、不便なことばかりではなく、意外に益も多い。どんな益かというと、「学校の食堂の料理よりも旬の食材を使え、栄養バランスに優れた健康に良い弁当にできる」「弁当を作るときに、朝食を食べている子どもと会話ができ、普段はなかなか取れないコミュニケーションを図れる」などだ。

 実は、自分にも意外な益がある。それは、弁当箱に料理を詰めた後、余った分を自分の朝食にできることだ。以前は、パンと牛乳ぐらいの簡単な朝食だったが、弁当作りを始めてから、子どもの弁当と同様に栄養バランスが良い朝食に変わった。また、弁当のおかずの種類を増やすために、料理の雑誌やレシピ本もよく読んで料理の腕も磨けた。最近は、もう1つ意外な益があった。弁当を作るとき、子どもは英検のためのリスニングテストをよく聞いている。自分も知らぬ間に英語のヒアリング練習ができていた。

手作り弁当
手作り弁当
(撮影:筆者)
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 もちろん、子どもが学校の食堂で昼ごはんを食べるようにしたら、弁当は不要になって筆者ももう少し寝ることができる。子どもも毎日弁当を持って電車に乗って学校に通う必要がない。しかし、子どもとこんなに身近に一緒にいられて会話ができるのは弁当作りのおかげであり、その時間は今も今後も貴重だ。まさに弁当作りは食の範ちゅうを超えて、幸せな時間作り、絆作りともいえるだろう。

 弁当作りの不便と益を真剣に考え始めたのは、最近、京都大学デザイン学ユニット特定教授の川上浩司氏の著書「不便から生まれるデザイン 工学に活かす常識を超えた発想」(化学同人)という本を読んでからだ。その本のおかげで、再認識できた。不便には、もっと深いことが秘められていると分かった。そして、考えさせられた。

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